清水寺からゆるゆると下る清水坂を少しだけ横道に入った、京都が誇る清水小学校。1933(昭和8)年に京都市や地域住民の寄付によって建てられた、意匠を凝らしたモダンな鉄筋コンクリート校舎。その姿を留めつつ、東山の守護神「青龍」という名のもとに、2020年にヘリテージテルとして生まれ変わった。
ファサードを留めただけのリノベーションホテルではなく、2011年まで学校として、また東山区のコミュニティーの中心施設でもあった清水小学校の歴史と文化を、ゲストがホテル内の随所で体験できるような創意工夫が施されている。
東山山麓の傾斜地に広がる緑豊かな約7000㎡の敷地に、3棟の校舎がコの字型に配置され、大階段が舞台のように設けられた造りも昔のままだ。中央棟に続く大階段の最上部は、東山の展望が楽しめるテラスとなり、その奥のかつての講堂は図書館風のレストランに。1000冊以上の文化書籍が並ぶ本棚に囲まれ、地元の旬の食材が並ぶ朝食や、夜にはカジュアルな寿司バーが好評だ。
中央棟につながる南館は開校当時のままのタイル貼りのファサードにアーチ窓やスパニッシュ屋根がモダンな洋風の建物のたたずまい。もとは職員室や会議室であったが、今はレセプションが設けられている。
南館の向いの北棟には、東山区の景観を望むゲスト専用ラウンジがある。朝食や軽食、カクテルなどのドリンク、京都ならではのお点前で自由にくつろぐことができる。上がり畳が設けられ、茶道や舞妓さんによる舞、和楽の演奏などのイベントが定期的に行われる。
北棟には、小学校の資料や写真を展示したアーカイブを併設しており、その奥には、一棟の黒塗りの増築棟新館が隣接し、大窓のパノラマとミニマルラグジュアリーをうたう客室が14室。旧校舎の客室34室はすっきりとしたモダンさにクラシカルなタッチが。全室、洗練されたデザインと上質のアメニティーがそろい、ゆったりとした居心地だ。
敷地内にはデュカス・パリによるフレンチビストロもあるが、一番人気は旧校舎4階のバー「K36 The Bar & Rooftop」だ。八坂の塔のシルエット越しに、裾野に星屑のように街の光が広がる東山の稜線が望める。名バーテンダーによるシグネチャーカクテル「SEIRYU」を片手に、ブランケットに包まり、遠くの鐘の残音を運んでくる古都の夜風が心地よい。ふと気づくと隣の黒い増築錬は夜の中に消えており、ライトアップされた旧校舎が幻想的に浮かび上がっていた。
ほろ酔い加減で客室まで、壁沿いに飾られたいくつものかわいらしいアートオブジェを愛でながら、旧校舎の長い廊下を歩く。山林のようなアロマが漂う廊下の先まで敷かれた、龍の鱗と市松模様をモチーフにした絨毯の上をゆっくりゆっくりと……まるで、龍の背に乗って時空をさかのぼっているかのように。
●ザ・ホテル青龍 京都清水
TEL075-532-1111

