「奇抜なものより純粋なもの、目新しいものより継承されてきたものを大切にしたい」と話す池尻料理長。京都や大阪の料亭やホテルで研鑽(けんさん)を積み、兵庫県で温泉旅館の料理長も経験した腕は確かだ。西日本から信州へ、扱う食材はがらりと変わったが、「鯉などの素晴らしい川魚や、冷涼な高地で育まれる野菜の甘みや香りに刺激を受ける日々。素材の味を高めるのは引き算の仕事であることは変わらず。例えば野菜なら実も葉も使うなど、余すところなくいただく、日本伝統の食のことわりを貫けば、器の中におのずと季節の情景が浮かびあがる」と、意欲にあふれている。信州の滋味を味わい尽くすコースから伝わるのは、和の心だ。
満たされ、同時に浄化されるような「山の懐石」とあわせ、心身を調えてくれるのが、二つの湯殿で楽しめる源泉かけ流しの温泉だ。前身の温泉旅館ができたときに開湯して以来100余年。草津温泉の湯治帰りに立ち寄る「仕上げの湯」として愛され、歴史を重ねてきた。光と闇が交差する宿泊者限定の「メディテイションバス」、季節の移ろいを感じられる「星野温泉 トンボの湯」、どちらも心行くまで堪能したい。
●星のや軽井沢
長野県軽井沢町星野
TEL 050-3134-8091(星のや総合予約)