星のや 第2回
谷の集落に、憩う

星のやブランドの始まりの地として、2005年に開業した星のや軽井沢。水辺を囲む離れの客室群から成る「谷の集落」は、里山の原風景を想起させる。趣の異なる二つの温泉で源泉かけ流しの湯に浸かり、信州ならではの素材が織りなす「山の懐石」に舌鼓。二十四節気を意識した献立にも和の心が浮かび上がる。

Text Kei Sasaki

星のやブランドの始まりの地として、2005年に開業した星のや軽井沢。水辺を囲む離れの客室群から成る「谷の集落」は、里山の原風景を想起させる。趣の異なる二つの温泉で源泉かけ流しの湯に浸かり、信州ならではの素材が織りなす「山の懐石」に舌鼓。二十四節気を意識した献立にも和の心が浮かび上がる。

「奇抜なものより純粋なもの、目新しいものより継承されてきたものを大切にしたい」と話す池尻料理長。京都や大阪の料亭やホテルで研鑽(けんさん)を積み、兵庫県で温泉旅館の料理長も経験した腕は確かだ。西日本から信州へ、扱う食材はがらりと変わったが、「鯉などの素晴らしい川魚や、冷涼な高地で育まれる野菜の甘みや香りに刺激を受ける日々。素材の味を高めるのは引き算の仕事であることは変わらず。例えば野菜なら実も葉も使うなど、余すところなくいただく、日本伝統の食のことわりを貫けば、器の中におのずと季節の情景が浮かびあがる」と、意欲にあふれている。信州の滋味を味わい尽くすコースから伝わるのは、和の心だ。

満たされ、同時に浄化されるような「山の懐石」とあわせ、心身を調えてくれるのが、二つの湯殿で楽しめる源泉かけ流しの温泉だ。前身の温泉旅館ができたときに開湯して以来100余年。草津温泉の湯治帰りに立ち寄る「仕上げの湯」として愛され、歴史を重ねてきた。光と闇が交差する宿泊者限定の「メディテイションバス」、季節の移ろいを感じられる「星野温泉 トンボの湯」、どちらも心行くまで堪能したい。

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    ヒノキ材、十和田石などをぜいたくに用いた「星野温泉 トンボの湯」。
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    山路地の部屋。客室は、意匠も景色もそれぞれの魅力がある。
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    「日本料理 嘉助」。傾斜を生かした、食空間としては希有(けう)なしつらえ。
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●星のや軽井沢
長野県軽井沢町星野
TEL 050-3134-8091(星のや総合予約)

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「Nileport」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。