日本人の二人に一人以上は、一生涯のうちに何らかのがんにかかると言われ、40歳以上では43%以上ががんで亡くなっているというデータもあるが、早期発見で9割以上の治癒率が期待できる。早期発見にはがん検診が必要だが、日本人の受診率は、ある一つの部位でさえ50%前後にとどまっている。本来は毎年全身くまなくチェックすべきなのだが、「時間がないから」という理由で多くの人が受診できていない。もっと手軽にできる検診があれば、受診率は上がるはずだ。
日本ではまだあまり知られていないが、欧米先進国でがんの臨床検査に幅広く使われているのがCTC検査である。増殖の過程で血中に漏れ出したがん細胞をCTC(Circulating Tumor Cells=血中循環がん細胞)と呼び、これを検出できる最先端の検査と言われている。欧米を中心に、すでに3万を超える研究論文が発表され、米国のFDAでも承認されている。
このCTC検査をさらに進化させたマイクロCTC検査を日本で行っているのが、東京・代々木にクリニックと検査センターを持つセルクラウドである。セルクラウドの執行役員で、CTC検査事業責任者の太田剛志氏に話を聞いた。
「大学病院で20年以上、がん治療に携わってきましたが、手術しても治療できるのは1日に一人だけ。これではがんはなくならない、もっと他にできることはないかと考えていたときに知ったのが、マイクロCTC検査です。がんによる死亡率を下げるため、医師として残りの人生を捧げるならこれだと直感しました」
遺伝子検査や、唾液や尿で判定するがんリスク検査もあるが、これらはあくまで間接的な傾向値を測り、がんリスクが高いか低いかを漠然と提示するもので、信憑性に欠けていたり、結果に納得できないといった声も多い。それに対してセルクラウドのマイクロCTC検査は、血中にもれ出したがん細胞そのものを直接捕捉し、その個数まで明示するので、大きな納得感がある。がんにおける世界有数の研究治療施設である米国MDアンダーソンがんセンターが開発した94.45%の特異度を誇る「細胞表面ビメンチン抗体」の世界独占利用を実現した検査手法を導入。血中にもれ出したがん細胞の中でも浸潤・転移の高い能力を持つ悪性度の高い間葉系がん細胞だけを特定し捕捉することを可能にした。
クラウドファンディングのマクアケでの先行販売では、マクアケでの医療・検査カテゴリーの史上最高額を更新するなど大きな反響を得た。すでに上場企業7社、業界最大手企業5社と業務提携を発表し、さまざまなルートで検査の普及を図っている。
「全国に約150の協力医療機関があり、採血をしたらすぐ血液が検査センターに届くシステムも構築しました。早期発見で治療のあらゆる負担が軽減されることを踏まえると、たった5分の採血で精度の高いがんリスク検査ができるのは、大きなメリットだと思います」
太田剛志 おおた つよし
セルクラウド執行役員CTC検査事業責任者。医学博士。元順天堂大学医学部先任准教授・悪性腫瘍専門。1999年、順天堂大学医学部卒、2005年に同大学院を修了し博士号を取得。公益財団法人がん研究会有明病院婦人科勤務を経て、09年には順天堂大学医学部附属練馬病院准教授。11年、台湾・チャングン記念病院留学。15年、順天堂大学医学部附属順天堂医院准教授。17年、同先任准教授。
●セルクラウド
TEL 03-5990-6180
※『Nile’s NILE』2023年11月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています