AGAという言葉が普通に聞かれるようになり、“薄毛はすべてAGA”というイメージが独り歩きしている。AGAとは男性ホルモンが引き起こす脱毛症のことであり、脱毛症の一原因に過ぎないが、その大半をAGAと自律神経が引き起こす脱毛症とで占めているので、このような誤解が生じたのかもしれない。
「患者様の薄毛・脱毛症の原因は何なのかが診断できないと、的確な治療方針を立てられないので、この診断はとても大切だと考えています」とは、アスク井上クリニック院長の井上浩一氏。美容の一部として植毛を行っていた約25年前、自毛の小さな株での移植である現代的植毛をその黎明期から取り組んできた。
自毛植毛とは、自分の毛髪を薄くなった部分に移植し、薄毛を治療する外科手術のこと。自身の毛髪を移植するので拒絶反応を起こすことなく、生着すれば生涯自分の髪として生え続ける。
井上院長は当初、アイランドタワークリニックでフランスのメディカマット社の器械と手法によるパワードFUEを行っていたが、器械と技術の改良を重ね、i-ダイレクトを開発。その後、さらに進化させた i-SAFEを開発し、東京・新宿にアスク井上クリニックを開院した。自身が考案したこのほぼオリジナルの技術で世界を席巻できるという思いが、クリニック開院のモチベーションになったという。
i-SAFEの注目すべき点は、株採取における吸引補助(サクションアシスト)を明確にしたことにある。浅い刃入れでも、切断率の低い株(グラフト)を採取できるようになり、これは世界でも類を見ない方法だという。「多少切断されても生着することはありますが、生着率を高くしようと思えば、まず採取株の切断率を下げる必要があります」。一般の株作成の切断率は平均5〜20%程度と言われているので、i-SAFEの切断率0.3%以下は極めて低いと言える。
「植毛は医者一人が行う手術ではなく、アシスタントドクターとナース四、五人というチームで行います。作業を専門化・分担化することで、精度を高めるわけです。ですからすべてのメンバーのスキルが高い次元にあることが要求されます。そういう意味でも優秀なスタッフをそろえていることが重要です」
たとえば、移植は毛根を持たず毛の部分だけを持って針穴に糸を通すがごとく行うが、これを完璧に行うには、知識、才能、経験が必要となる。
「薄毛治療を内科的治療で行えればそれが一番いいのですが、現状使用できる薬剤は副作用も強く、また効果も安定していません。体のことを考えれば、手術で増やし、薬は副作用を起こさない程度に補助的に使用するのが最善と言えます」
質の良いグラフト、そして生着率100%を導き出す植毛技術に次いで、井上院長が大切にしているのは生え際のデザインだ。最終的な仕上がりの美しさや自然さにもこだわっている。
「今後はうなじの毛や細い毛の移植精度を高め、そうした技術や器械を開発したい」と井上院長。別次元の満足を多くの患者に提供してくれるだろう。
井上浩一(いのうえ・こういち)
アスク井上クリニック院長
1955年、熊本県生まれ。88年、熊本大学医学部卒業、熊本大学医学部附属病院勤務。89年、某大手美容整形外科クリニック本院勤務。98年、都内美容外科クリニック院長就任。2002年、植毛クリニック開院。14年、アスク井上クリニック開院。22年、アスク美容クリニック銀座開院。
●アスク井上クリニック
TEL 0120-2323-18
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