補綴(ほてつ)とは読んで字のごとく、補い、綴つづり合わせることであり、身体の欠損した部分を人工物で補う治療、つまりかぶせものや義歯、インプラントなどを指す。
一般歯科診療でもごく普通に行われているが、患者の口腔内のみならず表情といった外見まで考慮し、患部にとってどのマテリアルや補綴方法が最適かを診断し治療するのが、歯科補綴学の専門医。海外では治療が複数歯に及んだり複雑になる場合は補綴専門医の治療を受ける。
石上貴之医師は、なぜ米国の大学を選んだかをこう話す。
「日本の大学でも歯科補綴学を学べますが、日本人の手先の器用さもあってか、一人ひとりが自己研鑽して身につける職人技のような、学ぶ側はそれを見て覚えろ的な部分があるのに対し、米国ではエビデンスベースで、理論的に構築された知識を身につけることが重視されています。もちろん経験は大切ですが、私は患者様に理論的にきちんと説明できる、『私の経験上』よりももっと確実なエビデンスをもとに治療を行いたいと考え、米国で学んできました」
留学先では本当にたくさんの知識と経験を積むことができたと話す。
「歯科治療は病変部や欠損部を、最終的に詰め物やかぶせもの、義歯、インプラントなどで修復します。例えばかぶせもの一つとっても、さまざまな素材があり、メリット・デメリットがあります。補綴専門医は、その『何を使いどんな方法で補綴するのがベストか』を数々のオプションから提案することができます。そこにはインプラントや歯内療法、矯正、口腔外科などがかかわってきます。医院を開くにあたり、意思疎通がしっかりできる専門医のチームを作り、同じゴールを共有して治療に当たる体制を整え、患者様一人ひとりに最適な治療を行いたいと考えました」
保険に縛られない自由診療だからこそ、じっくりと患者の希望に耳を傾け、その人が「人生をどう生きていきたいのか」に貢献する医療を提供したいと、石上医師は言う。