
日本では一般庶民が物価高騰に苦しむ一方で、富裕層が増加している。野村総合研究所の2023年調査によれば、純金融資産1億円以上を持つ「富裕層」および「超富裕層」は合計165.3万世帯に達し、2021年から世帯数で約11%、資産総額で約29%増加した。2005年からの推移では、富裕層・超富裕層は約2倍、準富裕層は1.4倍に増加し、中間層は減少傾向にある。
近年注目されているのは、いわゆる「ニューリッチ(新富裕層)」である。彼らは物質的ステータスを重視する「オールドリッチ(旧富裕層)」とは異なり、体験や価値観に基づいた消費を重視する。例えば高級車や高級時計を所有していても、投資価値を重視し、豪邸よりも利便性の高いタワーマンションの賃貸を好む。別荘も所有ではなく、シェアリングで合理化する傾向にある。
また、彼らは「所有」より「体験」を重視する。例えばバルーン型宇宙船で成層圏を旅する企画や、アンコールワットを貸し切っての食事会など、希少性の高い体験に価値を見出している。こうした消費は単なる娯楽ではなく、同席者とのネットワーク構築や新たなビジネスのきっかけにもつながる。つまり、彼らは「お金を払うことで何を得られるか」を重視し、消費を自己投資や人脈形成の手段として捉えている。
高級品についても、ニューリッチは「所有すること」に価値を感じるのではなく、「将来的に価値が上がるか」という観点で判断する。ヴィンテージカーのような高額商品であっても、それが資産としての価値を持てば「無料で高級車を持てた」と考えるのだ。
彼らの特徴は、消費を通じて情報やネットワークを獲得し、それを次のビジネスや投資に活かすという長期的視点にある。例として、英国の名門ボーディングスクールへの子どもの入学も「モノよりネットワーク構築」という考えからくる選択だ。贅沢品を集めるより、将来につながる価値に投資する姿勢が顕著である。
一方、庶民の消費は「安いから」「好きだから」「人に自慢できるから」といった短期的・感情的な判断が多い。ニューリッチのような大きな投資は難しいにせよ、「中古市場での価値を調べる」「購入時と売却時の価格差を意識する」など、少しでも投資的な視点を取り入れることで、日常的な浪費を減らすことは可能だ。
また、「少しでもお金を使うことで得られる情報や信頼」がある。例えばアンティークの世界では、冷やかしだけでは信頼されない。何度も通い、少額でも購入することで、専門家からの情報や学びを得ることができる。これも「消費ではなく投資」と考えれば納得がいく。
つまり、重要なのは「この出費から何を得られるのか?」という問いを常に持つこと。たとえ豪快な消費ができなくても、無駄遣いを減らし、将来価値を見据えた消費を心がけることで、ニューリッチの思考に一歩近づけるかもしれない。
情報元:PRESIDENTオンライン
https://president.jp/articles/-/95698