
「英語の時制」は日本語とは違うため、つまずく人が多い。もっと直感的に理解する方法はないか。英語コーチのマーク氏は「日本人が英語の時制でつまずくのは誤解しているポイントがあるからだ。教科書の説明を読むより図解のほうが誤解を防ぎながら理解を深めることができる」という――。
※本稿は、マーク(村木幸司)『見るだけでわかる‼ 英語ピクト図鑑』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
#### 日本人が英語の「時制」を苦手とする理由
英語学習において、日本人がつまずきやすい要素の一つが「時制」です。英語には、日本語には存在しない完了形や完了進行形などの時制があり、中学や高校で一通り学んだものの、完全に理解しきれずに苦手意識を持ったまま大人になってしまう人も少なくありません。
実は私自身も、長い間「時制」が理解できていない一人でした。しかし、30代で英語の学び直しを始め、英文法を一から丁寧に見直したことで、ようやく「時制」の本質に気づくことができたのです。
その後、英語コーチとして活動するようになり、SNS(X/旧Twitter)で中学英語レベルの文法をわかりやすく解説するスライド投稿を始めました。ただ、「時制」だけはどう説明すれば誰にでも伝わるか、なかなか良い方法が思いつかず、悩んでいました。
そんなとき、ある投稿で「時制」を過去・現在・未来の軸にピクトグラム(人の形をした記号)を組み合わせて解説する図を見かけたのです。その図を見て、「これならもっと視覚的に伝えられるのではないか」と考えました。
#### ピクトグラム図解がSNSで大反響に
私が考案したのは、過去・現在・未来を立っている人のピクトグラムで示し、進行中の動作を走っている姿で、完了形は赤い矢印と灰色のピクトで表現するというものでした。
作成したスライドをSNSに投稿すると、予想以上の反響がありました。「これなら時制が理解できる」「テスト前に知っておきたかった」といったコメントが多数寄せられ、特に学生層から多くの共感を得ることができました。
さらに実業家のひろゆき(西村博之)さんが「これは英語の教科書に載せるべき」とリポストしてくれたことが大きな転機となり、一気に投稿が拡散。30万件以上の「いいね」が付き、多くの人に見てもらえるきっかけとなったのです。
以降、私は英単語や文法事項をピクトグラムで表現する投稿に注力するようになり、現在では幅広い層に見ていただけるようになりました。
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### 英語の「時制」でつまずく3つのポイント
英語の「時制」を理解する上で大切なのは、動作や出来事が「いつ起こったのか」という基準を明確にすることです。以下では、特につまずきやすい3つのポイントをご紹介します。
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#### ポイント①:「現在形」は“いま”のことだけではない
多くの人が誤解しているのが、「現在形」は「今この瞬間のこと」を表しているという認識です。たしかに現在形は「今」に関係しますが、それだけではありません。
たとえば、
**I study English.**(私は英語を勉強する)
という文は、「今、まさに勉強中」という意味ではなく、「普段から勉強している」という習慣を示すものです。これは「現在形」ですが、「習慣的にやっていること」や「一般的事実」などにも使われます。
一方で、「いま実際に勉強している」という状況を表したい場合には、
**I am studying English.**(私は英語を勉強しているところです)
という「現在進行形」を使います。こうした違いを図で視覚的に示すと、理解が深まります。
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#### ポイント②:「過去形」と「完了形」の違い
「過去形」と「完了形(特に現在完了)」の違いも、混同されやすいポイントです。
**過去形**は、「過去のある一点で起きたこと」を示します。
例:**I visited Paris.**(私はパリを訪れた)
一方、**現在完了形**は、「過去に起きたことが現在まで影響を及ぼしている」または「今に続いている」ことを表します。
例:**I have visited Paris.**(私はパリに行ったことがある)
現在完了形には以下の3つの用法があります。
– **経験**:過去に何度か起きたこと
例:**I have eaten sushi.**(寿司を食べたことがある)
– **継続**:ある状態が過去から今まで続いている
例:**I have lived here for ten years.**(ここに10年間住んでいる)
– **結果**:過去の出来事が今に影響している
例:**I have lost my keys.**(鍵をなくした=今も見つかっていない)
図を用いてピクトグラムで表現することで、それぞれの時制の時間的な流れや意味の違いが視覚的に把握できます。
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#### ポイント③:英語には「未来形」が存在しない
英語には実は「未来形」という時制は存在しません。未来のことを表現するときは、
**will** や **be going to** などの助動詞や熟語を使うことで、「未来の意思」や「予測」を表現しています。
例:
**I will go to the party.**(私はパーティーに行くつもりです)
**I am going to go to the party.**(私はパーティーに行く予定です)
これらの文で使われている動詞自体は「現在形」です。つまり、動詞そのものが「未来形」に変化しているわけではありません。この点をしっかり理解しておくことが大切です。
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### 視覚的に理解することで、英語がもっと身近になる
時制の理解において、文字による説明はどうしても難しく感じられることがあります。しかし、ピクトグラムのように視覚的な情報を取り入れることで、直感的な理解が可能になります。特に英語に苦手意識がある大人や、まだ抽象的な概念の理解が難しい中高生・小学生にとっても、効果的な学習方法となるでしょう。
英語の時制を正しく理解することは、話す・書く・読む・聞くすべてのスキルに直結する基礎となります。だからこそ、楽しみながら学べる工夫が、学習の継続にもつながるのです。
情報元:PRESIDENTオンライン
https://president.jp/articles/-/94352