大阪を東京・汐留のようにするわけにはいかない…大阪駅前の超一等地に「世界最大級の公園」ができたワケ

日本全国で再開発が進む中、大阪駅北側の「うめきた」地区は特に注目を集めています。ここは旧国鉄の貨物駅跡地で、「関西最後の一等地」とも呼ばれてきました。再開発は2期に分かれており、2013年には第1期の「グランフロント大阪」がオープン。そして現在、第2期である「グラングリーン大阪」が開発中で、2027年の全面開業を予定しています。

2024年3月には第2期南街区に「グラングリーン南館」が開業し、初日から3日間で約70万人が来場しました。この施設には高級ホテル「ウォルドーフ・アストリア」や阪急阪神ホテルズの高級ブランド「ホテル阪急グランレスパイア大阪」、さらにアジア初進出となる「タイムアウトマーケット大阪」など、富裕層やインバウンド客をターゲットとした施設が並びます。

ところが、こうした商業施設に加え、グラングリーン大阪の約半分にあたる4.5ヘクタールの敷地を占めるのが、「うめきた公園」という大規模な都市型公園です。公園は直接的な利益を生まないため、再開発においてここまで大規模な緑地を設けるのは珍しいことです。

この公園設置の背景には、関西経済同友会の篠﨑由紀子さんの存在があります。彼女は長年にわたり大阪の都市活性化に取り組んできました。うめきたの再開発に着手するきっかけとなったのは、2001年に小泉政権が都市再生を掲げたことでした。ちょうどその頃、未利用地である梅田北ヤードの活用が課題とされていたのです。

汐留の失敗から学んだことも重要でした。東京・汐留では、バブル崩壊後に土地を切り売りした結果、街としての一体感が失われたことが反面教師となりました。篠﨑さんは「大阪駅前を汐留のようにしてはいけない」と考え、関西経済同友会を通じて国や自治体、土地保有者に一体的な開発を働きかけました。その結果、2004年に「まちづくり基本計画」が策定され、「水と緑あふれる環境づくり」も明記されました。

大阪市はもともと緑の少ない都市であり、「1人当たり都市公園面積」は全国で下位に位置します。そのため、2008年には関西経済同友会が「2期はグリーンパークに」と提言し、市民向け講演会などを通じて世論を喚起しました。この提言は、再開発による収益性と公共性のバランスをどう取るかという課題にも直結しています。

第1期「グランフロント大阪」は民間主導で進められたため、オープンスペースが少なくなりました。これに反省の念を抱いた篠﨑さんたちは、第2期では行政の介入を強め、緑地の重要性を訴えました。もちろん、デベロッパーからは「緑は金にならない」との懸念も出されましたが、篠﨑さんは韓国・ソウルの清渓川やニューヨークのブライアントパークといった事例を示し、「緑の経済効果」は十分に見込めると主張しました。

結果として、2014年にはうめきた2期地区のうち約半分を公園として整備する方針が決まりました。2024年には、日本政策投資銀行と都市再生機構による調査で、グラングリーン大阪が周辺地価を最大19.4%上昇させ、大阪府全体に年間639億円の経済波及効果をもたらすと報告されています。

今後、この開発エリアは短期的な利益追求ではなく、長期的な街づくりを志向しています。うめきた公園の土地はUR都市機構が整備し、その後大阪市に引き渡される予定です。そして、「うめきたMMO」という三菱地所などによるコンソーシアムが50年間にわたり管理・運営を担います。

この新しい試みでは、公園を訪れる人々、特に子どもたちと共に公園が「育つ」ことを目指し、街が一体となって成熟していく未来を描いています。篠﨑さんは「人口減少社会においては、短期的な開発よりも、長期的な視点で街を育てることが重要」と語ります。

また、国土交通省が新たに始めた「TSUNAG認定」制度など、緑地の価値を認める動きも加速しています。グラングリーン大阪の成功は、今後の再開発における一つのモデルケースとなる可能性があり、「大阪をマネする時代」が訪れつつあります。


https://president.jp/articles/-/93693

ラグジュアリーとは何か?

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