
近年の研究により、糖類の過剰摂取が子どもの健康に及ぼす悪影響が明確になってきました。2024年10月に発表された研究では、幼少期に多くの添加糖類を摂取した成人が、高血圧や2型糖尿病になりやすいことが示されています。これは、現在の子どもたちが摂取している糖類の量が適切な基準を超えている可能性を示唆しています。
糖類の過剰摂取は大人にも悪影響を及ぼしますが、幼少期の摂取が特に問題視されています。幼少期から甘いものを好む習慣が形成されると、生涯を通じてその嗜好が続く傾向があると指摘されています。糖類には果物などに含まれる天然糖類と、加工食品などに添加される添加糖類があります。特に添加糖類の摂取量が問題視されており、米国の子どもたちは1日にティースプーン17杯分(約300キロカロリー)を摂取していると報告されています。
世界保健機関(WHO)は、1日あたりの遊離糖類の摂取量を総カロリーの10%以下、理想的には5%以下に抑えることを推奨しています。米国政府も2歳未満の子どもには添加糖類を与えるべきではないとしています。
ある研究では、第二次世界大戦中の英国での砂糖配給制を活用し、幼少期の糖類摂取と成人後の健康リスクを比較しました。その結果、配給制の時期に幼少期を過ごした人々は、糖類が自由に摂取できた世代と比べて2型糖尿病のリスクが35%、高血圧のリスクが20%低いことが明らかになりました。この研究は、幼少期の環境が健康に及ぼす影響の大きさを示しています。
糖類の過剰摂取は子ども時代にも影響を及ぼします。高カロリーな糖類を多く含む食品は肥満を招き、2型糖尿病のリスクを高めます。研究によると、毎日240ミリリットルの甘味飲料を摂取する男児は、インスリン抵抗性が34%増加することが示されています。また、女児の初潮が早まる、虫歯のリスクが高まるなどの影響も報告されています。
糖類が子どもを多動にするという説は誤りであることが1990年代の研究で否定されていますが、注意力の低下や衝動性の増加といった認知機能への影響が指摘されています。動物実験では、幼少期に大量の果糖を摂取したラットが、注意力の低下や衝動性の増加を示しました。
さらに、少量の糖類摂取でも健康に悪影響を及ぼすことが明らかになっています。研究では、1日のカロリーの25%を添加糖類から摂取したグループの肝脂肪や血中コレステロール値が最も増加しましたが、10%しか摂取していないグループでも増加が見られました。特に果糖ブドウ糖液糖は肝臓への負担が大きく、大量摂取は脂肪の蓄積を引き起こす可能性が高いとされています。
子どもの糖類摂取量を減らすには、親が食品表示を注意深く確認することが重要です。しかし、糖類は多様な名称で表記されているため、理解が必要です。また、食品のラベルに明確な警告を表示することで、親の購入量を減らす効果が期待されています。
特に甘味飲料は糖類摂取の主要な要因です。子どもには水を飲む習慣をつけさせることが推奨されます。朝食時にも注意が必要で、市販のシリアルは糖分が多いため、プレーンオートミールに果物を添えるなどの工夫が効果的です。
また、スナック菓子やファストフードも糖類を多く含むため、できるだけ避けることが望ましいです。加工食品よりもホールフードや手作りの料理を取り入れることで、糖類の摂取量を抑えられます。
子どもに甘いお菓子を与えて慰める習慣も避けるべきです。糖類を摂取することで安心感を得る習慣が形成されると、将来的に過剰摂取につながる可能性があります。また、人工甘味料の使用もリスクが指摘されています。例えば、スクラロースは肥満や肝炎、腸内細菌への悪影響が報告されています。
完全に添加糖類を制限するのは現実的ではありませんが、子どもに適切な摂取量とタイミングを教えることが重要です。幼少期の食習慣がその後の食生活に大きな影響を与えるため、健康的な食習慣を身につけることが大切です。
出典:ナショナル ジオグラフィック
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/25/022500104/