アメリカの大学に「医学部」がない意外な理由

精神科医の和田秀樹氏は、日本の医学教育における問題点を指摘しています。特に、日本の医学生が医学以外に関心を持たず、教授選考が忖度まみれである点を批判しています。一方、アメリカでは医師養成のシステムが根本的に異なり、学問の発展と優れた医師の育成に真剣に取り組んでいると述べています。


日本の医学教育の問題点

1. 教授選考の閉鎖性と忖度
教授選考が既存の教授の意向に左右される
– 日本の大学では、新任教授の選考は既存の教授が主導し、優秀すぎる人は排除される傾向があります。
– 既存の教授陣が自らの立場を守るため、実績のある候補者が不当に評価されることもあります。
– アメリカでは、「ディーン(学部長)」が教授の選考を担当し、優秀な教授を他の大学からスカウトする仕組みが整っています。
– 実力主義のアメリカに対し、日本では教授選考に忖度が入りやすく、大学の発展が妨げられています。

2. 医学生の教養不足
医学以外の知識を学ぶ機会が少ない
– 日本の医学部では、学生が医学以外に関心を持たず、広い視野を養う機会が限られています。
– 医療経済や医療制度など、医師に必要な知識を学ぶ環境が整っていません。
– 一橋大学と東京医科歯科大学の合同授業で医療政策や医療経済を教えても、医学科の学生はほとんど参加しない状況が続いています。
– 医学生が「医学以外のことを学ぶ余裕がない」のか、「関心を持たない」のかは不明ですが、医療の現場では幅広い知識が必要であり、この状況は改善すべきとされています。


アメリカの医学教育との違い

1. 医学部の位置付けが異なる
アメリカの大学には基本的に医学部がない
– アメリカでは、大学卒業後に「メディカルスクール」に進学し、4年間の専門教育を受けます。
– 医師になるための学位(M.D.)を取得した後、医師国家試験(USMLE)に合格すれば、正式に医師として活動できます。
– メディカルスクールには、多様な学部出身者が進学可能で、例えば演劇を学んだ後に医学を志すこともできます。

18歳で医師になる道を選ばせない仕組み
– 日本では、18歳で医学部に進学することが医師になるための一般的なルートですが、アメリカではまず一般教養を身につけた上で医師を目指すことになります。
– 医学部入試の時点で「医者の適性があるかどうか」を判断される日本とは異なり、アメリカでは成熟した段階で医師への道を選ぶことができます。
– これにより、幅広い知識を持ち、人間性の成長を経た医師が誕生しやすくなっています。

2. 教育の質が高い
教授の質が保証されている
– アメリカでは、教授は指導力や教育能力を重視して選ばれ、授業の質が非常に高いです。
– 学生が教授の評価を行い、教え方が下手な教授は解任される仕組みが整っています。
– 一方、日本では教授の指導力が必ずしも重視されず、質の低い教育が行われていることも少なくありません。

臨床研修の期間が長い
– 日本の臨床研修は2年間ですが、アメリカでは4年間の研修が義務付けられています。
– 研修期間の長さだけでなく、研修内容の充実度もアメリカの方が優れており、しっかりとした指導を受けることができます。


医学教育改革の提案

和田氏は、日本の医学教育の改革案として以下を提唱しています。

1. 医学部を4年制の純粋な学問の場とし、医師養成は大学院で行う
– 医学をすべての人に開かれた学問とし、職業訓練の場とする現状を改めるべきです。
– これにより、医学を学びたい人が広く学ぶ機会を得られ、医師養成の質も向上すると考えられます。

2. 入試面接から教授を排除する
– 現在の医学部入試では、教授が面接を担当することが多く、恣意的な選考や不正の温床になっています。
– 入試面接は、公正な第三者が評価を行うべきです。

3. 大学院(メディカルスクール)を4年制にし、充実した教育プログラムを導入する
– 臨床研修を充実させ、アメリカ型の医学教育を導入することで、より良い医師の育成が可能になります。
– 医療現場での実習や研修の機会を増やし、実践的なスキルを磨くことが重要です。


まとめ

日本の医学教育は、知識偏重で教養や人格形成が軽視されている点、教授選考の不透明さ、入試の閉鎖性など、多くの問題を抱えています。アメリカのように、医学部を教養課程と切り離し、大学院レベルで本格的な医師養成を行うことで、より良い医師を育成する仕組みが構築できるのではないか、と和田氏は主張しています。

現在の日本の医学教育は、医師の質を高めるために抜本的な改革が必要であり、教授選考の透明化や教育プログラムの改善が求められています。


出典:ダイヤモンド・オンライン
https://diamond.jp/articles/-/358562

ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
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