
昨年末からホンダ(三部敏宏社長)と日産自動車(内田誠社長)の間で経営統合に向けた交渉が行われていましたが、2月6日に日産がホンダに協議打ち切りの意向を伝えました。日産はリストラ計画の策定が遅れており、ホンダは日産の子会社化を提案したとされています。実は、ホンダ内部では以前から「日産の役員人事にホンダが介入すべきだ」との声も上がっていたことが、ジャーナリストの井上久男氏の取材で明らかになりました。
経営統合に至るまでの経緯とホンダの提案
1月23日、日産の本社で内田社長と三部社長が会談しました。この会談では経営統合の方向性を確認するため、リストラ状況などが議論されたと見られます。しかし、進捗状況が思わしくなく、三部社長は非常に機嫌が悪くなり、リストラの決断が遅れている内田社長に対して不満を抱いたようです。このままでは統合交渉が進まないと判断したホンダ社内では、「日産の役員人事にホンダが介入すべきだ」といった意見が上がり始めたと言われています。
日産はカルロス・ゴーン時代に無謀な拡大戦略を取ったため、過剰な生産設備を抱えています。これにより迅速なリストラが必要となっているものの、内田社長は工場閉鎖に踏み切ることができない状況にあります。井上氏の取材によると、日産の元役員は、「内田社長や坂本副社長は思い切って工場を閉鎖する覚悟がない」と指摘しています。このため、内田社長については「決められない男」と評価する中堅幹部も存在し、社長の器ではないとの声が上がっています。
内田社長を選んだ背景とルノーの影響
内田社長がなぜ社長に選ばれたのか、その背景にはルノーの思惑があったと言われています。2019年9月に西川廣人社長が報酬問題で辞任した際、日産の指名委員会は次期社長を選定することになりました。当初は専務の関潤氏が有力候補でしたが、ルノーのスナール会長が異を唱えたため、最終的に内田氏が選ばれることになりました。ルノーは、関氏よりも内田氏の方が管理しやすいと判断したのではないかと言われています。当時、ルノーは日産の43%の株式を保有しており、その意向は大きな影響力を持っていました。
関氏はその後、台湾の鴻海精密工業に入り、電気自動車事業の最高戦略責任者として活動を始めました。そして、ホンダと日産の経営統合交渉に先立ち、関氏はルノーが保有する日産株の買い取りを打診していたことも明らかになっています。