
NHKは、システム開発を委託していた日本IBMに対し、開発の遅延による契約解除を行い、約55億円の代金返還と損害賠償を求めて東京地裁に提訴しました。問題は、日本IBMが途中で大幅な開発方式の見直しと納期遅延を要求したことに起因しています。NHKは事業継続に支障が生じると判断し、契約解除を決定しました。
この問題の背景には、非常に特殊なシステムであるNHKの受信料関連業務支援システムの開発が挙げられます。日本IBMは当初、このシステムの開発が可能だと考えていましたが、実際には開発途中で予期しない問題が発生した可能性が指摘されています。さらに、富士通が受注しなかった理由や、日本IBMが低い金額で契約した可能性も考えられています。日本IBMが2021年に分社化を行い、その影響で大規模システム開発のノウハウを持つ人材が不足した可能性もあります。
システム開発プロジェクトでは、要件定義や設計段階で固めた仕様でも、開発を進める過程で工数の増加や仕様変更が生じることが多いです。このような変更が発生した場合、プロジェクトの進行が遅れることがあり、最終的には追加費用やスケジュールの見直しが求められることになります。今回も日本IBMはこれらの問題に直面した可能性があり、プロジェクトの進捗に支障をきたしました。
契約解除の理由としては、業務委託契約書に基づき、定められた開発方式や納期を守らないことが挙げられます。日本IBMは多くの工数を費やしたため、裁判では責任割合が争われ、賠償額が決定されることになります。
日本IBMは過去にも、野村ホールディングスや文化シヤッターとのシステム開発契約で遅延や問題を抱え、法的な係争に発展していました。田中氏は、日本IBMが提案する製品やパッケージソフトに関するノウハウ不足が原因である可能性があると指摘しています。また、大手SIerのSEは、外資系ベンダーと日本企業ベンダーの違いも影響している可能性を指摘しています。外資系ベンダーは契約外の対応に対してドライな態度を取る傾向があり、そのため裁判に発展した可能性もあるとされています。