
LINEヤフーに所属する山中祥太さんが発表した論文「実質的に無限大サイズを持つターゲットのポインティング:2025年大学入学共通テスト『情報I』問題の一考察」は、2025年の大学入学共通テスト「情報I」に出題されたマウスカーソルでのターゲット選択に関する問題の妥当性を考察した研究報告です。
**問題の概要**
この問題では、画面上に配置された4つのターゲット(0~3)の中から、最短時間でクリックできるものを選ぶことが求められました。フィッツの法則(ターゲットが大きいほど、またはターゲットとカーソルが近いほど、ポインティング時間が短縮される)に基づき、さらに「カーソルがディスプレイの端で止まることで、そこにあるターゲットが実質的に無限大サイズを持つ」という条件が付加されています。この条件に基づき、公式解答としてターゲット2が正解とされています。理由は次の通りです:
– ターゲット2と3は「実質的に無限大のサイズ」とされ、0と1より短時間で選択可能。
– さらに、カーソルからの距離が近いターゲット2が最短で選べる。
**ソーシャルメディアでの反響と考察**
この問題に対しては多くの疑問が寄せられました。山中さんの論文ではこれを4つの観点で整理し、考察しています:
1. **ターゲットサイズが無限大の場合の移動時間**
フィッツの法則において、ターゲットサイズが無限大でも移動時間はゼロではなく、一定の基本時間に収束すると説明されています。人間の動作を考慮した弾道的ポインティングモデルでも、移動時間は距離の平方根と一次関数の関係となります。
2. **見た目のサイズの影響**
見た目のサイズが異なるターゲット2と3について、実験では「無限大のターゲット」であれば見た目のサイズに関係なく同じ時間でクリックできる結果が得られています。ただし、極端に小さいターゲットに対しては検証が不足しています。
3. **移動方向の影響**
左右方向への移動が最も容易で、前後方向が最も難しいという人間工学的な傾向がありますが、その差は約50ミリ秒程度であり、解答への影響は限定的です。
4. **「端」と「隅」の違い**
「端」のターゲットはカーソルの移動方向に対して無限大サイズを持つとみなされますが、完全な弾道的動作が難しく、位置調整が必要になることが多いです。一方、「隅」に配置されたターゲットはカーソルが確実に止まるため、移動時間とミスクリック率が低いことが実験で確認されています。
**結論**
問題文に基づけば、ターゲット2が正解である妥当性は維持されており、先行研究の知見もこの結論を支持しています。ただし、専門的な解釈に基づく異論も一部認められるものの、公式解答は合理的とされています。
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### 要約 ###
2025年の大学入学共通テスト「情報I」では、画面上のターゲットをマウスカーソルで最短時間で選択する問題が出題されました。この問題はフィッツの法則に基づき、「カーソルがディスプレイの端で止まることでターゲットが無限大サイズと見なせる」という条件を含んでいます。公式解答では、カーソルからの距離が最も短い「ターゲット2」が正解とされました。
しかし、ソーシャルメディアでは複数の疑問が提起されました。これに対し、山中さんの論文は以下の4点を考察しています:
1. ターゲットが無限大でも移動時間はゼロではなく一定の基本時間に収束する。
2. ターゲットの見た目のサイズはポインティング時間に影響しない。
3. 人間工学的に移動方向の差は50ミリ秒程度で、解答への影響は小さい。
4. 「端」のターゲットは位置調整が必要で、「隅」のターゲットがより確実かつ迅速に選択可能。
これらの知見を踏まえ、公式解答の正当性が支持されていますが、解釈の余地が一部残されています。
Source and Image Credits: 山中 祥太. 実質的に無限大サイズを持つターゲットのポインティング: 2025年大学入学共通テスト「情報 I」問題の一考察