
2025年4月13日に開幕した大阪・関西万博は、初日だけで14万6426人が来場し、以降も盛況が続いている。開幕11日目の4月23日には累計来場者数が100万人を突破、4月26日時点で137万9655人、5月12日には300万人を超えた。週末には1日10万人以上が訪れる日もある。
入場方法は大きく2種類あり、一般的なチケット利用では、事前に万博IDを登録し、日時指定チケットを購入。当日はQRコードで入場する。もう一方は「通期パス」や「夏パス」など複数回入場可能なパス所持者向けの顔認証入場で、事前に顔写真を登録すれば、当日はカメラに顔を向けるだけで入場できる。これにより、なりすまし防止やセキュリティ強化が図られている。
この顔認証を支えるのが、NECの世界トップレベルの顔認証技術である。NECは2009年以降、米国国立標準技術研究所(NIST)のベンチマークテストでたびたび世界1位の評価を獲得。2025年3月の最新テストでも首位に立った。独自のアルゴリズムとAI技術により、顔の向きや表情、マスク着用時でも高精度の認証が可能だ。
NECの顔認証技術は、東京オリンピックや空港、金融機関でも導入され、現在50カ国以上で利用されている。さらに、同社は社内DXとして、顔認証による「デジタル社員証」を導入。2020年の実証実験を経て、2022年から本格運用を開始し、2023年には国内の社員約2万人にデジタルIDを発行。2024年には「NEC丸ごとデジタルID」プロジェクトを展開した。
このシステムにより、社員は手ぶらで入退館でき、居場所確認やデジタル名刺交換、複合機やロッカーの利用、社員食堂や売店での顔認証決済も可能になった。顔情報と決済手段を事前に登録することで、非接触でスムーズな決済が実現。給与天引きやクレジットカードなど複数の決済方法に対応し、経理業務の効率化にも寄与している。
万博でもこの技術を活用し、通期・夏パス利用者の顔認証入場のほか、すべての来場者が利用可能な顔認証決済を提供している。利用者は、万博協会の公式アプリ「EXPO 2025デジタルウォレット」に万博IDを連携し、電子マネー「ミャクペ!」に登録後、顔情報を登録すれば利用可能となる。
会場内では、SMBCグループ提供の「stera terminal standard」を活用。全国の店舗でも導入が進むこの端末にNECの顔認証システムを組み合わせ、カメラに顔を向けるだけで決済できる。元々QRコード読み取り用のカメラだが、NECのソフトウェアにより顔認証に対応させた。会場には約1000台が設置され、ほぼすべての店舗で利用可能だ。
利用時にはスマートフォンの顔認証のように正面を見つめる必要はなく、軽く目線を向けるだけで完了する。この利便性は、荷物を持っていたり子どもを抱えていたりする来場者にも好評だ。
NECの伊藤愛氏は「日常生活で顔認証を使う機会はまだ少ないが、万博をきっかけに多くの方に体験してほしい」と語る。すでに全国の多くの店舗で利用されているstera端末にソフトウェアのアップデートを施せば、顔認証決済の導入が可能となるため、万博を契機に全国での普及が進む可能性もある。
情報元:https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2505/20/news075.html
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