香港島のビジネス中心街セントラルから、トラムで10分ほどのコーズウェイ・ベイ。緩やかな弧を描くコーズウェイ・ベイの内陸側に広がる香港随一のショッピング、エンターテインメント街だ。各国のレストランやローカルなグルメが軒を並べ、ナイトライフも盛んで24時間香港らしい活気があふれる。が、海辺には航海の女神をまつった道教の天后廟が、かつての漁村の名残を留める。ゆったりとした緑地の広がるヴィクトリア公園があり、早朝は太極拳の練習に市民が集まる。香港の忙しい日常と隣り合ったのどかさも旅行者には新鮮だ。セントラルに比べると、コロニアル時代の建物が少ないのは、香港を拠点にする英国のコングロマリット、ジャーディン・マセソン社が20世紀に商業地区として近代的な再開発を進めたためだ。現在も同社にちなんだ地名が多い。
創業者であったケズウィック一族の名をとった通りに面して、2005年に建てられたランソン・プレイス・コーズウェイベイ。にぎやかな中心街から一歩入っただけだが、クラシカルなたたずまいが優雅なコロニアル風情を漂わせている。壮麗なコラムに支えられたエントランスを入ると、白亜の上品なレセプションとそれに続くオランジェリー(温室)風のラウンジに迎えられる。ここのソファでウエルカムドリンク片手にゆったりとチェックイン。
パリの著名インテリアデザイナーの手による大改装を経て2024年にリオープン、心地よいモダンフレンチのインテリアに生まれ変わった。パステルトーンにフレンチタッチでまとめられた188室の客室は、天井までの窓から自然光と街の風景が満喫できる。上質なリネン類に快適さが増す。客室は半分近くがゆったりとしたレジデンスタイプで、85~180㎡のペントハウスも数室。そのため、ホテルというよりラグジュアリーなレジデンスのような落ち着いた雰囲気だ。24時間のランドリーやジムなどもあり便利。
2階のサロン・ランソンは、ゲストのための居心地のいい居間だ。食事はもちろん、お茶や軽食など、終日くつろげる。通りに面してオープンテラスの一角があり、行き交う人たちのにぎわいが手に取るように見わたせる。サロンの反対側の奥にバーカウンターがあり、めずらしい酒類も並ぶ。毎夕、香港にちなんだオリジナルなカクテルとカナッペのセット「香港・オデッセイ」が高評だ。コーズウエィ・ベイの庶民の活況ある生活に囲まれた、フレンチタッチのオアシスである。
世界90カ国以上650軒を超える独立系ラグジュアリーブティックホテルが加盟するスモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド(Small Luxury Hotels of the World)の加盟ホテルでもある。

