空間が描くブランドの世界

260年以上の伝統を誇るフランスのメゾン、バカラの世界を五感で堪能できる 「B bar Marunouchi」が、今年5月にリニューアルオープン。その内装設計・施工を、東京に本社を置き、デザイン・コンサルティング・コーディネーションを世 界11拠点で展開するGARDEが手掛けた。「B bar Marunouchi」のバーテンダー・福田英徳氏と、GARDEのデザイナー・桐谷万奈人氏に話を聞いた。

Photo Satoru Seki Text Mizuki Ono

260年以上の伝統を誇るフランスのメゾン、バカラの世界を五感で堪能できる 「B bar Marunouchi」が、今年5月にリニューアルオープン。その内装設計・施工を、東京に本社を置き、デザイン・コンサルティング・コーディネーションを世 界11拠点で展開するGARDEが手掛けた。「B bar Marunouchi」のバーテンダー・福田英徳氏と、GARDEのデザイナー・桐谷万奈人氏に話を聞いた。

空間が創る、情緒的経営価値。
Creating lasting value through spaces that resonate.

GARDEは、グローバルに展開するデザインコンサルティング企業として、ラグジュアリーマーケットにおける強みを発揮している。1985年の創業以来、東京を拠点にミラノ、パリ、ニューヨーク、上海、香港など世界11都市に拠点を構え、国際的なプロジェクトを数多く手掛けてきた。その事業領域は、商業施設やホスピタリティ、オフィス空間にまで広がり、世界の一流ブランドや一流企業の信頼を得ている。

最大の特徴は、デザインを単なる美的表現にとどめず、ブランド戦略や事業戦略と密接に結び付け提供できる点である。

不動産開発や企画の初期段階、すなわち川上からプロジェクトに参画し、ブランディング、デザイン、設計監理、施工監理、さらにオープン後の運営支援に至るまで、ワンストップで支援できる体制を整えている。これにより、顧客企業はデザインを通じてブランド価値を最大化し、投資効果を高めることが可能となる。

また、GARDEは従来のラグジュアリーデザイン分野に加え、新規事業領域として社会的価値を生み出す取り組みにも注力している。

地方創生プロジェクトでは、「タビイコ」という観光案内アプリを自社で開発し地域経済に貢献。メタバース事業では、メタバース空間のデザイン・制作・販売に加え、潤沢なノウハウの蓄積を持つデザイン事業の拡張を通じて顧客企業への付加価値提供に取り組む。さらにアート事業では、ニューヨーク・チェルシーにコンテンポラリーアートギャラリー「GOCA by Garde」を所有・運営し、日本国内のアーティストの発信拠点として国際的な文化交流を推進している。こうした取り組みは、デザイン会社の枠を超え、社会や文化に積極的に貢献する姿勢を示している。

また、サステナビリティ経営にも積極的で、企業活動の国際的な評価基準である「エコバディス」においてシルバー認証を取得。これは環境への配慮、人権・労働慣行、倫理、持続可能な調達といった分野で、一定以上の国際基準を満たしていることを意味する。

これによってGARDEは、世界各国の一流クライアントから求められるグローバルスタンダードを理解し、社会的責任を果たしながら事業を展開している。

ラグジュアリーマーケットを軸に国際的なブランドの価値創出を支えると同時に、地方創生やアートを通じた社会的な取り組みを進め、さらに持続可能な経営を実践する企業として進化を続けるGARDE。デザインを核に「空間を超えた価値」を創造し、顧客企業の成長と社会への貢献を両立させること。それが揺るぎない企業姿勢である。

EcoVadis社が提供する2025年のサステナビリティ審査においてシルバーメダルを獲得しESG・CSR企業として評価を得た。

地方創生事業

全国市町村の観光地の魅力を発信し観光客と地方の観光資源をつなぐ重要なプラットフォーム、タビイコを開発。

メタバース事業

メタバース空間のデザイン・制作・販売に加え、培ったノウハウと技術力を生かし自社開発したバーチャル美術館の企画・運営に取り組む。

アート事業

- GARDE創業40周年の新たな挑戦̶ -
アジアのアーティスト作品を世界に発信する拠点としてニューヨーク・チェルシーに初のアートギャラリー「GOCA by Garde」を開業。

Case 1
カンデオホテルズ 京都烏丸六角

京都市登録有形文化財である伝統的な町家「旧伴家住宅」をリデザインしたホテル。旧伴家住宅とは、近江八幡市にある歴史的な商家・伴家の本家として江戸時代に建てられた建築物で、主室と次の間から成る座敷はともに数寄屋風仕上げ。特に主室は床・棚・平書院を構え、棚の天袋・地袋の奥には池大雅の墨絵が張られているなど趣深い。

レセプション棟、客室棟、大浴場棟の三つの棟で構成された同ホテル。土間をそのまま残すことで京都の路地を表現したり、お祭りのちょうちんのようなつり下げ照明で町家に住む感覚を演出するなど、京都の伝統的な建築技法や文化を現代の建築技術と融合させることで、京都に泊まるといった体験に、文化に触れる、歴史の中で暮らすという付加価値を与えた。2021年6月オープン。

京都市中京区六角通烏丸西入 骨屋通149
TEL 075-366-2377

CASE 2
ハイアット ハウス 東京 渋谷

多様性の街・渋谷に誕生した、ハイアット ホテルズ アンド リゾーツ が展開する「ハイアット ハウス 東京 渋谷」の設計を担当。渋谷は、トレ ンド・カルチャーを発信し続ける時代の最先端の街である一方、古き面 影を残す路地や横丁を持つ。この「二面性」を体験として楽しめるよう、 空間デザインのテーマとした。

施設の空間と街がシームレスに連動し、ホテルにいる間も渋谷を楽し める設計。3階のエントランスから各客室まで展開されたアートワーク や、共有スペースに飾られた8名のアーティストによる19点の作品が、 街の魅力を伝える。一方で、「暮らすように泊まる」というブランド全体の コンセプト通り、居住空間としての過ごしやすさにも配慮し、自宅のよう に滞在することができるように設計を行った。2024年2月オープン。

東京都渋谷区桜丘町3-3
TEL 03-5428-3898

Case 3
Polène

2016年にフランス・パリで立ち上げられたレザーグッズを扱う新進気 鋭メゾン、Polèneのアジア初となる旗艦店。そのローカルアーキテクト・
施工を手掛けた。ローカルアーキテクトとは、海外で設計された建物を
日本で実際に建てる際、その設計を日本の法律や建築基準、環境、予算
などに合わせて最適化すること。本プロジェクトでは、フランス出身のデ
ザイナーが担当した設計を、デザイナーの意図や店舗のブランディング
に沿って実現した。

東京店ならではのエレメントとしては、漆塗りの置き式什器を設置。一
方、フランス人アーティストによるミッドナイトブルーの大判アートガラス
やレザーを用いた照明器具なども取り入れている。日本らしさとPolène
らしさを両立した、特別な空間となっている。2023年9月オープン。

東京都港区南青山5-3-18

Case 4
西武池袋本店

池袋のランドマークであり、常に時代の最先端として長い歴史を走り
抜けてきた西武池袋本店。今年7月以降順次リニューアルオープン中の
同店の、内装・外装を含む基本計画を担当した。

テーマは「INCLUSION」。現代の多様で柔軟な時代に合わせ、従来
別フロアに配置され、区別されることが多かった「婦人」「紳士」両カテゴ
リを同一店舗内に広く展開。友人、カップル、家族で一緒にショッピング
を楽しめる空間を実現した。特定の価値観で閉じられたぜいたくではな
く、一人ひとりにとって自由で、開かれたぜいたくを提供する。

改装後のコスメフロアの売り場面積は1.3倍。全館および各フロアの
建築デザインコンセプトである「MAISON」を「クラス感」「洗練」「アート」
という三つの要素で表現し、これまで以上に上質な空間に生まれ変わる。

●西武池袋本店
東京都豊島区南池袋1-28-1
TEL 03-3981-0111(代表)

●GARDE
TEL 03-3407-0007

※『Nile’s CODE』 Vol.35に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「Nileport」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。