
元プロ野球選手で、フォークボールを武器に活躍した名投手・佐々木主浩さん。日本だけでなくメジャーリーグでも華々しい戦績を収めた彼が現役引退後の趣味として選んだのは、馬を走らせることだった。
「引退後に新しい愉しみを探していた時、知り合いの馬主に勧められたのがきっかけでした。もともと、チームの先輩に誘われてたまにレースを見たり、馬券を買ったりはしていたので、一度やってみようかなと」
主浩さんは引退翌年の2006年5月にNAR(地方競馬全国協会)、そして同年11月にはJRA(日本中央競馬会)の馬主登録を行っている。妻であり、元女優・アイドルの加奈子さんは、そんな主浩さんに引き込まれる形で、競馬の世界に足を踏み入れた。20年の間でその魅力にどっぷりつかり、今では馬が可愛くて仕方ないのだという。

「もう、夫婦そろって馬に夢中です(笑)。年を重ねてくると、夫婦二人でオシャレをして出掛ける機会というのも減ってきますよね。でも、うちは馬のおかげで定期的に出掛けるんです。この前も、二人でレースを見に京都に行ったり、新しく生まれた仔馬を見に北海道の牧場に行ったりしました」(加奈子さん)
「夫婦で馬主活動をしていると、日常生活の会話も増えますからね。競馬って、シーズンオフがない。愛馬のレースに加え、出産やセリ、調教師さんとのやりとり……馬を中心としたルーティンが二人の生活の中に組み込まれているという感覚です」(主浩さん)
これまで合計38頭もの競走馬を所有してきた主浩さん。その一頭一頭の成長を見守るのだから、もちろん忙しい。年間で約8000頭生まれるサラブレッドのうち、最高峰のGⅠレースに出走できるのはほんの一握り。そんな中でも多くの一流馬を所有してきた主浩さんは、「馬主をしていると1年が早いです」と笑う。

「育成は調教師さんや牧場さんにお任せしています。僕はこれまで野球しかしてこなかったので、そこはプロに全て委ねる形で。自分の手で結果を左右できないもどかしさもありますが、だからこそ勝った時の喜びはひとしお。たくさんの方々に支えていただいているので、いつも感謝が尽きません。レースゲートに立てること自体が、本当に奇跡みたいなものですからね」(主浩さん)
「もちろん負ければつらいですが、もうそれはメンタルトレーニングだと思って(笑)。可愛い愛馬たちが無事にレースを終えて帰ってきてくれるだけで、ホッとした気持ちになります」(加奈子さん)
「初めはこんなに長く馬主を続けられるとは思っていなかった」としながら、佐々木夫妻は「長く続ける秘訣は、愛を持って愉しむこと」とほほ笑みあった。
愛を持って愉しむ――それは、夫婦生活を長く続ける秘訣とも重なる部分があるのかもしれない。愛馬に勝ってほしい、無事走り切ってほしい。そんな共通の願いが、二人の絆をより強固なものにしているのだ。
佐々木主浩 ささき・かづひろ
1968年、宮城県生まれ。元プロ野球選手。日本だけにとどまらず、メジャーリーグでも活躍した。現在は、日本プロ野球名球会副理事長を務める一方、野球解説者・野球評論家としても活動。2006年から馬主となる。
佐々木加奈子 ささき・かなこ
1980年、東京都生まれ。元女優・アイドル。ドラマや映画を中心に活躍していたが、結婚後は芸能界を引退し、夫や子供を支えてきた。夫が馬主となった後は夫婦二人で馬主活動を愉しんでいる。
●日本中央競馬会
TEL 03-3591-5251
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佐々木主浩さん編

佐々木加奈子さん編

佐々木ご夫妻編
