セレクトショップ「サロン ル シック セレクト」が誕生したのは2014年。当時は自然に胸板が厚く見えるようにバストを強調したジャケットに細身のスラックスを合わせた逆三角形シルエットのイタリアンファッションをメインに人気を集めていた。そこから10年。働き方の変化や環境問題など時代の流れとともに、ドレスファッションの定義も進化を遂げていると、バイヤーの米島力伊氏は語る。
「特にシルエットのバリエーションは格段に増えました。デザインもオンオフ問わず楽しめるようにカジュアル化してきている。そこで、展開のメインであったイタリアンファッションのみならず、世界各国の伝統文化を大切にしたものづくりに着目しようと考えました」
米島氏は、同じくバイヤーの大森貴登氏と世界を飛び回り、唯一無二の本物を追い求めた。そこにはインドの手織りコットンや中国のクロシェット編み、フランスの洋服細部にあふれる意匠など、世界は素晴らしいものづくりにあふれていた。
「私たちがミラノやパリに足を運び実際に見て仕入れているところも自信を持って勧められる点だと思っています。価格に関係なく〝本質〞を肌で感じ、今も今後も寄り添ってくれる服に出会って欲しいです」(米島)
世界中のブランドから買い付けする際には日本人に合う色味や体型に気を配ってセレクトするのも重要だ。大森氏は、その中でも国内ブランドにはないサイズ感や色目を提供できることが強みだと話す。
「国内ブランドのサイズが合わないというお客様のご相談が案外多かったりします。輸入品は袖や着丈が長いデザインが多いのでそこを解決できるのも当店の魅力だと思います」
今年10周年という節目に、世界各国のファクトリーブランドと別注アイテムの制作に取り組んだ。二人は実際に現地工場へ足を運び、デッドストックの生地探しや工場・アトリエに直接かけ合い、着丈や袖の長さなど細かなデザインまで〝本物〞を追求し、手掛けたのだ。ファクトリーブランドと手を組むことで歴史やクラフトマンシップを尊重しながら、大量生産をしない衣服ロス問題も解決できる。さらに染色では髙島屋の〝あるもの〞に目を向けた。
「`T(ティー)という日本ブランドとアウターを作った際には、髙島屋のギフトで展開する自社ブランドの製茶工場と協業し、生産過程で床へ落ちた茶葉や、使わない茎部分を回収し、染料として再活用し洋服を染め上げました。エコなものをたくさん作るより、ものづくりでロスを解決するという点を重視しています」(米島)
選択肢が増える世の中で、自身のスタイルを確立するにはという問いには、ブレることのない精神が宿る。「私たちがブランドのフィロソフィーや〝本質〞を見てお客様に自信を持って伝えるということ。そうすることで、熱量が宿りストーリーになります。それはお客様にもきっと伝わり、個々のスタイルにもつながっていくと思っています」(大森)
●日本橋髙島屋S.C.本館6階 サロン ル シック セレクト
TEL 03-3246-4258(直通)
※『Nile’s NILE』2024年10月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています