京都だけでなく、23年5月にはIHGホテルズ&リゾーツの新たなプレミアムホテルブランド「voco大阪セントラル」がオープン。ここでは古くから商人が市場を開いて栄えてきた大阪・京町堀エリアの歴史をくみ、四つ橋筋に面して開放的なレストランを設け、そのファサードにガラスカーテンウォールを採用して通りのにぎわいと一体感を持たせている。2層吹き抜けの低層階にはかつて京町堀に立ち並んだ蔵に着想を得た木組みのデザインをあしらい、戦前の民家で実際に使われていた柱や梁を再利用した古木を採用することで、新しくも懐かしい特別な空間としてゲストを迎える。かつてこの地にあった「京町ビル」で使われていた外装レリーフや郵便受け、扉なども館内アートや外壁に再利用された、大正ロマン薫る空間が特徴的だ。
地域の記憶と資産を先進の建物へと踏襲し、地域の価値共創に貢献する。NTT都市開発のこの活動は、京都において顕著であり、すでに紹介した2軒のほかにも、20年に京都市の旧京都中央電話局跡に位置する商業・宿泊施設「新風館」および「エースホテル京都」をオープンさせた。いずれも歴史的建造物を生かした改修や文化財の保全、周囲の景観と調和したレイアウトなどを施すことで、地域のランドマークとして親しまれている。
さらに、25年夏ごろに開業を予定している「元新道小学校跡地活用プロジェクト」も進行中だ。かつて花街のあったエリアに位置し、「“街の記憶の継承”と“新たな共存価値”の創造」をコンセプトに再整備を行う。小学校を含めた一帯を3次元でのデジタルアーカイブ化し、小学校と共存してきた宮川町歌舞練場を生まれ変わらせるとともに、バーチャル映像技術で新たな花街文化の発信を行うなど、地域文化を継承し、新たな人の流れを生む回遊性のある街づくりを目指している。
歴史ある文化施設は、重要な文化遺産であるだけでなく、地域のアイデンティティーである。こうした施設を、これからも産業や社会に大きな役割を担い続ける存在として「継承・向上」させることは、NTT都市開発が手掛ける街づくりの重要なミッションだ。実現には、各地域と協働することで、街に根付いた歴史・文化を深く理解することが不可欠である。伝統的な街並みと近代的な施設を融合させ、より活力ある街づくりへとつなげていく。同社のさらなる挑戦に注目したい。
●NTT都市開発 広報室
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※『Nile’s NILE』2024年6月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています