ジャスタウェイという馬をご存じだろうか。この競走馬は、2014年度に世界ランキング1位に輝いた、広く知られる名馬だ。馬主は、『名探偵コナン』を始め数多くの大ヒットアニメ作品を手掛ける脚本家の大和屋暁さんである。
「大和屋さんの馬の名前は、本当に面白いですよね」
彼の隣で目を輝かせるのは、フリーアナウンサーの皆藤愛子さん。都内ホテルで某日、中継番組でメインMCも務める皆藤さんが、多くの馬を〝走らせて〞いる大和屋さんに〝馬主〞のライフスタイルを聞いた。
「昨年、大和屋さんは、馬の鳴き声を由来とした〝ヒヒーン〞という馬をデビューさせていますが、いい名前だなと思っていました」
皆藤さんが話すと、大和屋さんはうれしそうに笑った。
「覚えやすい名前を付ければ、その馬を見てくれる人、好きになってくれる人も増えるはず。名付けは僕なりの馬への愛情表現なんです」
大和屋さんが競馬に興味を持ったのは、高校生の頃。オグリキャップがブームになった1980年代後半に、友人と見始めたのがきっかけだ。好きが高じて、やがて馬主になりたいと考えるように。大学卒業後は父の知人だった有名脚本家の浦沢義雄さんに弟子入りし、仕事に励んだ。その甲斐あって2010年、セレクトセール(※)でハーツクライの産駒を1260万円で落札。この馬 - ジャスタウェイが、大和屋さんの人生を大きく変えることになる。
※日本競走馬協会が主催する日本最大規模の競走馬セリ市。
ジャスタウェイは11年、新潟競馬場の新馬戦で初出走初勝利。天皇賞(秋)を制するなど多くの好成績を経て、14年のドバイデューティーフリー(現ドバイターフ)で従来のコースレコードを大幅に更新して優勝し、世界最強馬となった。
「13年の天皇賞(秋)は印象的でしたね。それまで2着が多くて出走できるかも不安だったので、優勝したときは本当に驚きました」
その後、目標であったドバイには親戚総勢16名を連れて行ったとか。
「その年の正月に『僕が全員ドバイに招待します』と宣言してしまったんです。競馬場にはよく行きますが、大きなレースだと楽しさもひとしお。ドバイで親戚と自分の馬を見て、しかも優勝するなんて。みんな喜んでくれて、一生の思い出になりました」
馬に生活費を稼いでもらっていると公言するほど馬主として類い稀な成功を収めている大和屋さん。馬主活動は事業であるが、それと同時に〝人生を懸けた趣味〞でもある。「馬のメダルやゼッケン、写真などで埋まってしまって、部屋は物置のよう」と語るその表情は、幸せそうだ。
「馬主活動で重要なのは賞金などの利益ではなく、自分の馬を最後まで愛し、責任を果たすことです。その気持ちがあるからこそ、馬も頑張って走ってくれる。競馬の神様は、きっとどこかで見ていますよ」
ニヤリと笑う大和屋さんの瞳には、深い愛情がにじむ。〝好き〞を循環させて、人々に夢や喜びを与える。それが大和屋流の馬主の生き方なのだ。
日本中央競馬会
TEL 03-3591-5251
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撮影協力/メルキュール東京日比谷
※『Nile’s NILE』2024年6月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています