自らの死後のことを、真剣に考えてみたことがあるだろうか。遺産をどうするかも重要ではあるが、もう一つ、遺骨についても考えておかねばならない。子どもがいたとしても結婚するかどうかわからない時代、子孫が先祖代々の墓を守ってくれることを当てにするのは少々不安がある。子どもや子孫がいたとしても、海外に住んでいたら、墓参りといっても難しいだろう。子孫の間で「墓はどうする」などという相談があるかもしれないなんて、考えるだけでもわずらわしい。だからこそ、「立つ鳥跡を濁さず」よろしく、自然葬を選ぶ人も増えている。自然葬にも海や森、木の根元などいろいろあるが、新しい選択肢として注目されているのが「深海葬」だ。
これだけ科学が進歩した現代にあって、この世で最も謎に満ちた、静謐な場所。それが深海だ。そこにどんな生き物がいて、どのような生活をしているのか、ほとんどわかっていないという。そんな地球最後のフロンティアに、死後とはいえたどり着けるのはロマンではなかろうか。
モンディアルが提案する深海葬は、日本一水深が深い湾である駿河湾の海底2000mで静かに眠るというものだ。クルーザーでのセレモニーの後、遺骨はクチャと呼ばれる、沖縄県産の泥岩で作ったクリオネ型の天然素材の骨壺「クリオール」に入れられ、静かに回転しながらゆっくりと沈む。やがて、さらに時間をかけて溶けてゆき、骨壺ごと海に還る。クリオネは“海の天使”と呼ばれることもあるという。かわいらしい天使に守られた、漁師の網も届かない神秘的な深海こそが、安住の地だ。
遺族は埋葬した場所がわかる深海埋葬証明書を、紙とデジタル版の2種類で受け取る。デジタル版ではGoogle Earthを使ってパソコンやスマートフォンから埋葬場所を確認でき、故人の写真が表示されたデジタル墓標により、24時間いつでも自由に墓参りができる。この方法なら、忙しくても墓参りで故人をしのぶ時間をとれるだろう。春からはデジタル墓標の個人の写真をアバターにし、故人のアバターとコミュニケーションがとれる新サービスも開始される予定だという。遺族にとっては、大切な人を亡くした悲しみをデジタルの力でわずかでも癒やすことができる。
遺骨を包む紙も、クリオネ型の骨壺も、2㎜以下のパウダー状にした遺骨も完全に海に還るため、環境に負荷をかける心配はない。遺族によるセレモニーはあるが、地域住民に配慮して平服のまま、漁場や釣り場などの要所を避け、陸地より5㎞以上離れた場所で行うなど、周辺への配慮も徹底されている。自然葬を選ぶなら、誰にも迷惑をかけずにきれいに自然に還りたいという美学にも、しっかりと応えてくれる。
人生の終わり方に向き合うことは、これからの生き方を決めることだといっても過言ではないだろう。自分らしい、独創的な終活の一つの選択肢として、深海葬を検討してみてはいかがだろうか。
●モンディアル
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