フランチャコルタを味わう至福のひとときは、グラスに注ぐ瞬間に始まる。きめ細かな無数の泡が束になって湧き上がり、軽やかに舞う。やがて黄金色の液体が静けさに覆われるころ、一本の泡がかすかに揺らぎながらスーッと立ち上る。思わず見惚れる美しさに時間が経つのも忘れるほどだ。すばらしいスパークリングワインが描く一筋の泡は、かなりの時間消えずに呼吸し続けるという。愛好家を魅了するこのフランチャコルタとは、どんなワインなのか。
深い森に抱かれた葡萄畑の記憶をたどると、ルーツは中世16世紀ごろに遡さかのぼる。千年以上前の氷河に削られて形成された丘陵地で、葡萄の栽培が始まったのだ。豊富なミネラルを含む土壌、良好な気象条件など、ワイン醸造にとってこの上ないテロワールに恵まれた土地だけに、当時からすでに地元の消費量を上回るワインが生産されていたようだ。
しかしそこでワイン造りの歩を止めていたら今日の成功はなかっただろう。約3世紀の時を経た1960年代、この地に大きな転機が訪れた。醸造家のフランコ・ジリアーニが11の生産者とともに、瓶内二次発酵によるスパークリングワイン造りに挑戦。酵母の澱おりを入れたまま最短でも18カ月以上の長期にわたって瓶熟成を行うこの製法で、複雑にして官能的な特有の香りを醸す極めて高品質のワインを完成させたのである。