穏やかな秋風が通り抜ける、開放的なテラス。澄んだプールの水面から反射した陽のひかりが、天井にまだらを作っている。アジアンリゾートのムード漂う表参道のレストラン「CICADA」で、その人は語った。
「やっぱりほしいのは、一緒に夢を見られるような馬ですよね」
眼鏡の奥の目を細めるのは、この店のオーナー、寺田心平さん。彼の話を興味津々に聞いているのが、フリーアナウンサーの砂岡春奈さんだ。この日、生粋の競馬ファンである砂岡さんが、同じく競馬好きで馬主でもある寺田さんに、馬主活動のいろはを教わるインタビューが実現した。
「若い頃から予想が好きで、頭脳ゲームとしての競馬の魅力にハマりました。好きが高じて一口馬主になり、しばらくしてJRAの馬主資格をとり、順当にステップアップして、今は毎年1頭ずつ馬を購入しています」
人々の希望を乗せ、力強くコースを走る競走馬。JRAのレースに出走させるためには、馬主登録の審査を受ける必要がある。正式な馬主になった寺田さんがはじめに持った馬は、馬主で生産も行っている友人の義父との共有馬だったという。
「この馬は、好きな牝馬に相性の良さそうな種牡馬を選び、かけ合わせてもらって生まれた馬でした。スピードの面では少し足りず残念でしたが、自分の馬がレースで走っているのを見るのはやっぱり特別ですよ」
寺田さんは、自分の馬が走るレースは極力観戦しに行く。「可愛い子どもの運動会みたいなものですから」と、まるで子煩悩な父親だ。
馬主活動で重要なのは、人脈。正式に馬主になる前からある程度の知識があったとはいえ、初めて競りに参加して緊張している寺田さんにそのノウハウを教えてくれたのは、そこで出会った先輩馬主たちだった。競りはまさに〝大人の社交場〞。馬主には馬主のコミュニティーがあり、交友関係が一気に広がるというのもメリットの一つといえるだろう。