京都・西陣を拠点とする川島織物セルコンが展開するSHは、同社の最高級ライン。インハウスデザイナーである本田純子氏の研ぎ澄まされた感性により、日本の表情豊かな四季を織物にデザイン。季節の移ろいや光と影、水や空気の流れなどを丁寧に描き出し、同社の職人が持つ高度な技術によりその微妙な濃淡までも織物の中に表現している。
SHの大きな特徴の一つが、多様な糸を綿密に組み合わせて二重に織る「風通織」を取り入れていること。角度によっては表面に現れていない糸が見え、立体感や奥行き感を表現できるのだ。そして今回の新作では、さらに織物らしい魅力が感じられる仕上がりに。胡蝶蘭がモチーフの「バッラーレ」では、「姿綴じ」という刺繡のように見せる織り方で肉厚な花弁の質感を出し、気品と高級感を実現。さらに、収縮糸を随所に組み込むことで凹凸を出し、織物ならではの美しい陰影を生んでいる。
また、草花をそのまま絵画のように表現した柄が定番となっているSHだが、今回は少し印象を変えて胡蝶蘭の花、蕾、葉を切り離してパターン化。背景に四角い幾何学模様を入れて構成し、モダンに仕上げた。フレームにも見える幾何学模様に胡蝶蘭がリズム良く重なるモダンエレガントなデザインは、どこかダンディズムを感じさせ、男性からも人気を集めそうだ。背景となっている幾何学模様のみで構成した「シレンテ」も新作にラインアップしている。
さらに今回は、ブドウの葉をモチーフにした2種の柄も展開。イタリア語でブドウ畑を意味する名の「ビーニャ」は、葉やツルを幾重にも重ねて絵画のように描いている。一方で、「クラータⅡ」はブドウの葉とセンリョウの実をパターン化し、文様と地色の色味を統一することでしっとりとした印象に仕上げた。「クラータⅡ」には、縦糸に金糸または銀糸を織り込んだ特別な柄もあり、空間をゴージャスに演出できる。
シルクかと思うほどに柔らかで軽いSHのファブリックだが、実は全てポリエステルで出来ている。そのため家庭での洗濯が可能で、湿気の多い日本の気候でも手入れがしやすい。これほど豊かな表現をかなえながら、メンテナンス性にも優れるファブリックは他にはないだろう。住まいの豊かさがこれまで以上に問われる今日、美しいファブリックで暮らしを彩ってみてほしい。
※『Nile’s NILE』2020年4月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています