茨城県牛久市を拠点にする藏持は、しばしば“こだわりすぎる家づくり”が注目を集める。
「近年は、日本の伝統技術や文化をさらに深く掘り下げるようになりました。伝統美を生かしながらも、個性的なデザイン、他にはない住まいを追求しています」と話すのは、代表取締役の藏持圭一氏。創業は1946年、数寄屋大工の父が会社組織として立ち上げた後、数寄屋建築を現代のライフスタイルに合わせてアレンジした住まいを生み出している。
藏持の真骨頂は数寄屋造りにあるが、古来日本の建築に用いられてきた「大和比(白銀比)」にもこだわっている。大和比とは、いわばA4サイズの比率。安定した美しさがあり、神社仏閣を始めとする歴史的建造物などに多く見られる。しかし、大和比を使って住宅を造るハウスメーカーはほとんどないそうだ。
「大和比は日本の美のルーツというべきもの。大和比を生かすことで安定感のある美しさを表現することができます。当社では、建物全体のフォルム、外観や建具などに大和比を用いています」
また日本の伝統建築で使われる木や石、漆喰、和紙といった自然素材もふんだん取り入れている。特に木材は、八溝杉の産地として知られる八溝山系の木材を使用し、直接山から買い上げた原木を自社用に加工。この木材はJAS規格に適合しているため、安心も担保している。自然素材が持つ心地良さは、藏持の住まいに欠かせないものなのである。
通常の注文住宅より、さらに深く掘り下げたスタイルを実現するために立ち上げたのが縁プロジェクトだ。暮らしづくりに関わる、あらゆる分野のマイスターや文化人がアイデアを提供するというもの。
「お客様のこだわりをかたちにするため、縁プロジェクトを取り入れています。それにより、お客様の満足度が高まっていると実感しています」
たとえば車好きの人の住まいを考える場合、乗るのが好き、見るのが好き、メンテナンスが好きというように、さまざまな嗜好があり、求める空間は必ずしも同じではない。釣りや山登りなどアウトドア系が好きなら道具を置くためのスペース、美容にこだわりがあるなら広々としたパウダールームなど、それぞれのこだわりに合わせて各分野のマイスターが専門的なノウハウを生かしたアイデアを提案してくれる。
縁プロジェクトには、着物デザイナーや書道家など文化人も多く、プロダクトの共同開発も行う。壁紙や襖ふすま、家具、食器など、どれも日本の伝統美を生かしたデザインで、空間に美しく調和する。これらは藏持がタイ・バンコクに展開するショールームでも紹介。日本の伝統を受け継ぎながら最先端のデザインを世界に発信している。
伝統と革新を融合させた新しい住まいの提案
こうした藏持のこだわりが集約されているのが、数寄屋造りに現代のエッセンスを取り入れた「THINK HOUSE」だろう。木造2階建てのコンセプトハウスで、外観からは分からないが、上から見ると八角形。中に入ると、個性的でありながら、心地良いくつろぎの空間が広がっている。1フロア8ピースの空間で構成されており、1ピースごとに藏持のこだわりを詰め込んだ住まいだ。
「日本を代表する実業家の白洲次郎が生きていたら、どのように暮らすかを想像しながら造りました。シガーを燻くゆらせたり、靴磨きを丁寧にしたり。洗練された身のこなしで“日本一カッコいい男”と言われた人が、羽を休める空間を造りました」
また牛久展示場やつくば展示場でも、藏持ならではの住まいを実際に体感できる。数寄屋造りと現代のデザインを融合し、縁プロジェクトの個性をプラスした空間は、それぞれのライフスタイルに合わせた、他にはない唯一無二の上質な暮らしを実現してくれる。
藏持では、住み手のこだわりが詰まった家づくりはもちろん、土地探し、資金計画、エクステリア、インテリアまで、暮らしに関わる全ての提案を行う。戸建ての新築、リフォーム、リノベーションのみならず、マンションにも対応し、近年は別荘のためのプロジェクトも始動するなど、藏持の邁進はこれからも続く。
※『Nile’s NILE』2020年4月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています