うららかな日差しとまぶしい新緑に満ちた気持ちの良い季節、赤や白、ピンクの花を咲かせるツツジが野山や街を彩る。自然界が春から夏へと向かうエネルギーを象徴するかのような華やかな花だ。インテリアファブリックブランド、Sumiko Honda(以下SH)による2019年の新作は、このツツジがメインモチーフ。「日ざし あふれて」をテーマに、美しく、そして力強い初夏の情景をファブリックに織り上げている。
SHは創業176年の歴史を誇る織物メーカー、川島織物セルコンが提案するインテリアファブリックの中でも最高級のブランドだ。インハウスデザイナーの本田純子氏が、四季折々の美しい日本の自然情景からインスピレーションを得て、空間を彩るファブリックとしてデザイン。原画は手描きで、水彩や墨が生み出す微妙なグラデーションまでもを織物で表現している。緻密(ちみつ)な織組織に基づいて多様な糸を立体的に織り上げたファブリックには奥行き感が備わり、光によってさまざまな表情を見せてくれる。
「木々や草花がエネルギッシュに芽吹く季節。たくさんの花々が咲きそろい、色鮮やかな群れとなる様子をイメージしました」と最新作のコンセプトを話す本田氏。毎年、一つの花をモチーフに選んで新作を発表してきたSHだが、ツツジをモチーフにした今年の「エリカチェア」では実は新たな挑戦をしている。同じファブリックの中にもう一つ、ヤマボウシを組み合わせてデザインしているのだ。
梅雨時期に花を咲かせるヤマボウシを選び、ツツジから季節をつなぐように重ね合わせることで、より豊かな表現を実現した。ツツジは大きめ、ヤマボウシは小さめと、あえて大小をつけているため、カーテンとして取り入れたときに2種の花がストライプを描き、陰影が出るように。たっぷりとヒダを取る場合はもちろん、フラットなスタイルにする場合でも立体感が強調され、まるで花に包まれているかのような華やかな空間を演出する。
そして、同時発表した「ソラリタ」でも2種の花をモチーフにデザイン。ユリの一種である大輪のグロリオサと、幾重にも花びらを重ねるラナンキュラスを組み合わせている。絵画のような「エリカチェア」に対して、「ソラリタ」はパターン化した文様が全体に広がる総柄とし、2種の花を凹凸の違いで表現した。さらに、水や雲の流れ、石畳などをイメージした抽象的な色柄も追加。初夏らしいグリーンを中心にカラーを展開している。
また、今後はSHのファブリックを使用したバッグやポーチ、ペンケースといった小物も発売予定。「好きな花を飾るように、まずは身近に置いてもらい、ファブリックのあたたかさ、自由さを感じてもらえるとうれしいです」と本田氏。表現力豊かなSHの世界を、暮らしに取り入れてみてはいかがだろうか。
●川島織物セルコン
TEL 03-5144-3892
※『Nile’s NILE』2019年6月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています