グローバルリーダーを目指して
海陽学園で特徴的なのは、「国際社会で活躍するリーダーの育成」を目標の一つに掲げ、英語教育に力を入れていることだ。他校に比べると授業数が圧倒的に多く、基礎学力の修得を徹底する一方で、習熟度に合わせて「話す・聞く」に重きを置いた実践的なクラスもある。
例えばAEC(Advanced English Class)は、帰国生と英語力の高い生徒が対象。文学を原書で読み解釈・議論をする、時事問題をテーマに発表やディベートを行うなど、授業は海外の大学並み。かなりハイレベルだ。
「私たち教師が一方通行的に講義する形式はあまりとりません。特に上級生になると、発表が中心ですね。生徒が先生のように講義したり、ディスカッションを進めたりして、授業をリードしています。そういった学習が、TOEFLやSAT対策の授業と合わせて、いわゆる受験英語に必要な能力を強化するトレーニングにもつながっています」
と言うAECクラス担当のセート・ラジャディープ先生は、インド出身。日本文学の宮沢賢治を専攻し、流暢(りゅうちょう)な日本語を操る。彼以外のネイティブの先生は3名を数え、国籍はさまざま。生徒は自然とアメリカ英語やイギリス英語だけではなく、多様な英語に触れることができる。
世界の“英語方言”に対応可能な能力まで身につく、そんな配慮にも“生きた英語”を学ぶ環境づくりに余念のない、海陽学園らしさがうかがわれる。 海陽学園はイギリスのパブリックスクール・イートン校を参考に設立されている。イートンといえば、名門中の名門である。
「イギリスの名士は皆、イートン校出身」と言っても過言ではない。学業はもとより芸術やスポーツ等も重視し、豊かな教養とノブリス・オブリージュの精神を育成せんとするイートンの精神は、そのまま海陽の「全人教育」につながる。
創立当初より両校の交流は親密で、特筆すべきは「短期留学制度」が設けられていることだ。派遣される海陽生は毎年二人。留学中はイートン生と同じ制服を着て、同じ授業に出席し、課外授業やハウスでの日課もこなす。遊び半分の語学留学とは一線を画すプログラムである。高い英語力が求められるだけに、校内選考は厳しい。
折しも1~2月、6週間の留学を終えて、穴田悠人・安藤憲佑両名が帰ってきた。留学の成果は……?「英語はまだまだだと実感しましたが、授業は楽しかった。特にディベートで、テーマに向かってチームで一つのものをつくり上げていく、その時の一体感に興奮しました。あと中世史の授業で、例えば『曖昧(あいまい)な言葉をどう置き換えたら、議論がしやすいだろう』と、最初に先生の出すテーマを分析するところから始めるのが印象的でした」(穴田君)
「僕のハウスには香港、韓国、インドロシアなど海外留学生が多かったんですが、国籍による偏見はなく、個人対個人の関係を持てました。それがすごく良かったですね。授業は、例えばシェイクスピアの『アントニーとクレオパトラ』を読んで、皆で自分の解釈や意見をぶつけ合うなど、互いに学び合う形式。効率のいいやり方だと感じました」(安藤君)
また二人が痛感したのは、「美術や宗教を勉強し、教養を高めていく」ことの重要性。「今後は学校の勉強に加えて、その方面も一歩踏み込んで学んでいきたい」と声をそろえる。
大学受験を来年に控え、理系に強い穴田君は東京大学、外交の仕事を志す安藤君は海外の大学に進学したい考え。この留学経験は必ず、二人の将来にいい作用をもたらすだろう。 英語力と国際性、豊かな教養、健全な身体と強靱(きょうじん)な精神……海陽学園の全人教育の今後に期待したい。
●海陽学園 海陽中等教育学校
愛知県蒲郡市海陽町3-12-1
TEL0533-58-2406
※『Nile’s NILE』2019年4月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています