小波立つ三河湾沿いの広大な敷地には、最上階に天文台を備えた中央棟、教室棟、食堂棟、体育館など近代的な建物が並ぶ。グラウンドはアメフト・サッカー・野球が同時にできる広さ。子どもたちが伸び伸びと成長していくのに申し分ない環境だ。
〝人生の学び舎〟たるハウスでは、1学年120名、6学年で約720名の生徒全員が暮らす。
ここで注目すべきは、寮長であるハウスマスターに加えて、トヨタ・JR東海・中部電力を中心とする賛同企業から毎年若手社員が派遣され、フロアマスター(FM)として活動していることだ。現在26名いる彼らは、生徒とともにハウス生活を営む。
普段の生活はもとより、進路や授業の目標づくり、悩み相談までをサポート。時には反抗心むき出しで食ってかかるヤンチャな生徒たちに、日々本気で向き合っている。頼りになる兄貴的存在だ。
「まだまだ生徒たちは発展途上ですから、自分のことしか考えなかったり、他の子とやり方や意見が違うとぶつかったりもします。でも失敗するために学校がある。そこから得る学びは大きいと思いますね。究極的には、真っ先に人のために何ができるかを考える子になって欲しい。西洋流に言えばノブレス・オブリージュの精神ですね。本校では、FMの所属企業訪問や世界で活躍する専門家の特別講義など、キャリア教育にも重きを置いています。少年期に自分がどう社会に貢献するかを考え行動するいい機会になるでしょう」
と加納啓次教頭。身の回りのことは自分でできるようにするのが海陽生への第一歩。親御さんたちは「帰省するたびに成長がわかる。家事を手伝うとか、人への気づかいが細やかになった」と喜んでいるという。
また、もう一つの学び舎での学業の成果も着実に積み上げている。
基礎学力の習得から応用まで、自然に身につく6年一貫のカリキュラムに加えて、習熟度別授業、ハウスでの夜間学習、課外学習などが充実している。成果は上々。1期生の約1割が東大に合格したことで世間の度肝を抜いた。医学部や、早慶といった難関大学にも毎年多数合格しており、大学受験実績の地歩も固めている。学業優秀で人間力があるとなれば、卒業生が次代のリーダーになることにも現実味が増すというものだ。
さらに部活動やハウスごとのイベント等の課外活動を通して、生徒が興味のある分野に全力で打ち込めるのも全寮制のメリット。これまで数学や化学などの各種オリンピックでメダル受賞、アメフト部が関西選手権大会で準優勝するなど、各方面で目覚ましい実績をあげる。
「創立13年目を迎える今年は、カリキュラム・時間割を変更し、授業と選択講座を充実させ、土曜午前中に多様な学びの時間を設けます。また生徒一人ひとりとキャリアを考えるアカデミック・アドバイザーや、6年を3段階に分けたハウス運営を導入し、より強力に進化を推進していきます」
―海陽学園から巣立つ子どもたちへの期待は高まる一方だ。
●海陽中等教育学校
愛知県蒲郡市海陽町3-12-1 TEL0533-58-2406
※『Nile’s NILE』2018年2月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています