伝統と革新、二つの概念は相いれないように思われる。しかし、スイスを代表するウォッチマニュファクチュール、ジャガー・ルクルトの歴史をひもとくと、革新を積み重ねることが伝統となり、伝統が次なる革新をもたらし、新たな価値を生ための創造性豊かな土壌が形成されてきたことが分かる。
最も顕著な例が、1931年に発表され、メゾンを代表するアイコンとなった「レベルソ」だろう。インド駐在の英国人将校からの要望で、ポロ競技中にケースを反転させて風防ガラスを守るメカニズムの腕時計として開発されたものだ。当時、あまりにも革新的なモデルだったのは言わずもがな。それが、時を経る中で、さまざまなタイプの「レベルソ」が製作され、誕生から90年以上を経た今も、反転するレクタンギュラーケースやアールデコ様式の美質を受け継ぎながら伝統を紡ぎ、静かな進化を続けている。
この秋、オリジナルのデザインコードを受け継ぐ「レベルソ・トリビュート」コレクションのモデル「レベルソ・トリビュート・デュオ・カレンダー」が生まれ変わった。ピンクゴールドモデルは、表ダイヤルにトリプルカレンダーとムーンフェイズ、裏ダイヤルに第2時間帯表示とデイ/ナイト表示という機能性はそのままに、これまでのグレイン仕上げの表ダイヤルに代えて、サンレイダイヤルを採用。控えめなエレガンスが一層際立つ。グレーカラーの裏ダイヤルのデザインも一新し、ソフィスティケートされた、広がりを感じさせる表情となった。