1989年にイギリスの権威あるオーディオ雑誌に紹介されたことを契機に、国内よりもむしろ海外での評価が先行。1997年からは、創業者の姓を冠した「KONDO」のブランド名で海外展開を強化する一方、2009年から国内での販売も再開、日本の愛好家の歓迎を受ける。
残念ながら近藤氏は2006年に急逝するも、後継者たちが、その哲学を守り、進化を続けている。そこに一切の妥協はない。
「小さな部品まで手作業で仕上げ、独自のオーディオ製品を創り上げているメーカーは、世界的にも他に例がないのではないでしょうか」
オーディオ・ノートの現・代表取締役の芦澤雅基氏は、穏やかな口調の中にそうプライドをにじませる。サウンドディレクターの廣川嘉行氏も、こう付け加える。
「アンプの電子部品一つの違いや、ケーブルの太さの違いでも音が変わってきます。小さな1歩でも、10歩重ねると1ランク上がる。仮説を立てて、試作、検証を繰り返し、やり過ぎぐらいのところまで追求してから、1歩下がってさまざまな角度からバランスを図り、慎重に妥協なく、音づくりを詰めていきます」
気の遠くなるような細かい作業の積み重ねの上に、オーディオ・ノートの音が完成していくのである。