獺祭の醸造過程で、ヨハン・シュトラウスⅡ世の代表曲「入り江のワルツ」を聞かせると言う、何ともロマンチックで壮大な試みが昨年実現した。事の発端は、オーストリア連邦産業院から、大阪関西万博でのお披露目を目的に、日本とオーストリアの文化交流を深める特別な日本酒を共同で造る提案を受けたことに始まる。オーストリアパビリオンのテーマである「未来を作曲」のコンセプトに沿うようにとの考え方から、醸造中にタンクにスピーカーを貼り付けて曲を聞かせ、丁寧に仕上げた酒をパビリオンで提供し、好評を博した。具体的には、ウィーンフィルハーモニーの六重奏からなるフィルハーモニック・テイストと日本センチュリー交響楽団が、それぞれ「入り江のワルツ」をウィーンと日本で演奏、録音し、醸造中の純米大吟醸 磨き二割三分に聞かせたのである。と言っても液体は振動を受け取るだけだが、桜井一宏社長によると、発酵の進みが気持ち早いといいうことだ。
獺祭にとっても初めての試みは、まさに「未来を作曲」というテーマにふさわしいではないか。そしてそのご縁を機に、オーストリアを代表するガラスメーカー、ロブマイヤー社と陶磁器メーカー、アウガルテン社と共同でオリジナルのグラスと酒器を製造。こうした国を超えた文化交流の意義を伝えたいと、去る、12月26日に正統派のオーストリア宮廷料理を供する「銀座ハプスブルク」で音楽、日本酒、酒器、料理のコラボレーションを楽しむ晩餐会が開かれた。生演奏を聴きながら、美酒と美味のマリアージュを楽しむ、なんとも贅沢な会となった。ロブマイヤーのオリジナルのグラスでは「獺祭 未来を作曲」の香りが華やかに弾け、アウガルテンの酒器では「獺祭 未来へ 農家とともに」をじっくり味わうという、コラボレーションの魅力をいかんなく発揮する趣向がこらされた。こうした海外との交流がますます獺祭の酒造りの幅を広げ、磨いていくのであろう。

