持続する「百年の輝跡」

銀座に中国名菜の館を構えて100周年を迎える銀座アスター。銀座に地歩を固めつつ、変貌する町とともに波瀾万丈の歴史を刻んできた。中央通りに本店を含む五つの店舗を展開する同社は、今や、「銀座のシンボル」的存在だ。時代の大きなうねりを、銀座アスターはいかに生き抜いたのか。創業以来守り続けている経営の「核心」と、機を見るに敏で事業に新風を吹き込む「革新」―。創業家3代目・矢谷郁社長が、過去から未来へと続く「銀座アスターの不易流行」を語る。

Photo Masahiro Goda  Text Junko Chiba

銀座に中国名菜の館を構えて100周年を迎える銀座アスター。銀座に地歩を固めつつ、変貌する町とともに波瀾万丈の歴史を刻んできた。中央通りに本店を含む五つの店舗を展開する同社は、今や、「銀座のシンボル」的存在だ。時代の大きなうねりを、銀座アスターはいかに生き抜いたのか。創業以来守り続けている経営の「核心」と、機を見るに敏で事業に新風を吹き込む「革新」―。創業家3代目・矢谷郁社長が、過去から未来へと続く「銀座アスターの不易流行」を語る。

銀座アスター 銀座南店

  • 持続する「百年の輝跡」、銀座アスター 持続する「百年の輝跡」、銀座アスター
    甘海老の春巻
    「胡蝶蘭(こちょうらん)コース」の本日のアミューズとして提供される一品。小豆の海に浮かぶ帆掛け船か? 具は甘海老のタルタル。紹興酒に漬けた「酔っ払い海老」を細かく切って、香味野菜と合わせて、タルタル状にしたもの。これを、春巻の生地を筒状にして焼いたものに少量入れる。皮のパリパリした食感と甘海老のプリプリ感がリズムを奏で、コースの前奏曲にふさわしい。調理長の個性がお客様に喜びと驚きを与える南店オリジナルだ。
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    柑橘とA菜の強火炒め
    A菜は結球しないレタスの一種。油麦菜(ヨウマイツァイ)とも呼ばれ、油との相性がいいそうだ。ほのかに甘みがあって、香りは爽やか。独特の風味に「中華」を感じる。そのA菜が金柑と炒め合わされるこの料理は、シャキシャキした食感とほんのりした苦みと甘みに加えて、ニンニクのパンチがきいて楽しい味わい。つやのある緑と鮮やかなオレンジ色が調和し、彩りも美しい。
  • 持続する「百年の輝跡」、銀座アスター
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銀座南店は1964年、先のオリンピックが開かれた年にできた古いお店だ。「隠れた名店」ともささやかれ、多くの人たちに愛されてきた。足の向くまま、気の向くまま、スッと入れる気軽さがあって、定番料理に加えて調理長の個性的な料理に心が躍る、そんな魅力のゆえんだろう。

銀座の中央通りから少し入り、みゆき通りと三原通りが交差する一角にたたずむこの南店が、今年3月、新メニューとともにリニューアルオープンした。2023年より調理長を務めるのは山田康弘氏。「自分ならではの一皿を表現したい」と意気込む。

アスターの料理人は全員が生え抜きだ。入社と同時に一から研鑽(けんさん)を重ね、調理長になると、ブランドの味を守る一方で、「調理長のおまかせ前菜」をはじめとするオリジナルメニューを提供する裁量が得られる。自ら創案した料理は、年に3,4回行われる検討会に出し、認められればゴー。調理人としては腕が鳴るところだろう。

自身も「ふらりと立ち寄れる路面店が好き」郁社長は言う。

「調理人がお客様の好みに合わせた味付けやアレンジなどに柔軟に対応できるのが、南店ならではの良さ。忌憚(きたん)のない要望を、どんどん出していただきたい。舌の肥えたお客様に鍛えられれば、それが調理人の成長とやりがいにもつながります。そういうテーラーメイドの店が一軒くらいあってもいいって、思っています」

機会を見つけて、ぜひ銀座南店へ。さらに磨かれた老舗の魅力に触れてみてはいかがだろう。

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    山田康弘 やまだ・やすひろ
    2004年に調理職で入社。20年目の2023年より、銀座南店調理長を務める。「ブランドの味を守りながら、オリジナルメニューを通して南店ならではの魅力付けをしていきたい」と意欲的。
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    2025年3月にリニューアルオープンした銀座南店は、隠れ家のような落ち着いた雰囲気。調理長の個性が光る新たなメニューも加わり、本店とはまた違う味を楽しむことができる。
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●銀座アスター 銀座南店
東京都中央区銀座5-9-11
TEL 03-3571-4550

※『Nile’s NILE』2025年5月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「Nileport」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。