リストランテ ホンダの20年

東京のイタリア料理店が成熟期を迎えた2000年代、その半ばに東京・青山にオープンした「リストランテ ホンダ」。世の中が変わり、レストランのあり方が大きく変わる中、アップデートを繰り返しながら、”東京のリストランテ”というスタイルを貫き、多くのゲストに支持されている。2024年9月で20周年、今日に至るまでの歴史の中で変わったこと、変わらないこと。本多哲也シェフと「リストランテ ホンダ」の歩みについて話を聞いた。

Photo Masahiro Goda  Text Kei Sasaki

東京のイタリア料理店が成熟期を迎えた2000年代、その半ばに東京・青山にオープンした「リストランテ ホンダ」。世の中が変わり、レストランのあり方が大きく変わる中、アップデートを繰り返しながら、”東京のリストランテ”というスタイルを貫き、多くのゲストに支持されている。2024年9月で20周年、今日に至るまでの歴史の中で変わったこと、変わらないこと。本多哲也シェフと「リストランテ ホンダ」の歩みについて話を聞いた。

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    鴨のロースト
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当初から、食材は国産が基本だ。

「片岡シェフの下で、トップ生産者の食材をたくさん扱ってきていたので。フランスやイタリアでも、地のものを使うのが当たり前だった」

リストランテの料理は“モード”でなければ。だから時代時代でアップデートを繰り返してきた。スペイン、北欧など世界の最先端のガストロノミーから学ぶ。それから和食や、和食器からも。

「和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたころから、“DASHI”や“UMAMI”は、世界のガストロノミーの共通言語に。和食器も、若い造り手に光が当たればと、かなり早い段階で取り入れていました」

常に視野を広く、前例がないことにも恐れず挑めたのは「自分が作れば、イタリア料理になる」という確固たる思いがあったからだ。

「もう30年以上、イタリア料理だけをやってきたわけですから。心の中にはいつもイタリアの情景がある」

修業を始めたのはミラノだったが、その4年前、初めて渡ったイタリアはローマだった。

「先輩を頼って渡り、魚介料理が有名な店で3カ月働いて。ローマが、自分のイタリアの出発点です」

今回、ローマにちなんだ料理を二品、用意してくれた。一品は「黒トリュフのアル・チェッポ」。ローマ帝国時代から親しまれてきたとされる黒トリュフを使ったシンプルかつリッチなパスタ。卵を使わない生地のショートパスタもローマ以南の文化だ。もう一品は、鴨のロースト。帝国時代のローマから北部へ伝わったといわれている鴨肉に着目し、エピスをまとわせて香り豊かに。地理的にも歴史的にも要となる地を基点に、南へ、北へ。イタリアの食文化への敬意と探求と、そこからの創造と。本多シェフの核がここにある。 

20周年の節目に抱く思いは、安堵(あんど)でも達成感でもない。気持ちは、すでに未来に向いている。後進の活躍の場を広げ、これからにふさわしい東京のリストランテを形にすること。「リストランテ ホンダを、100年続く店にしたいんです」

ローマ帝国時代からの歴史から見れば100年も一瞬? しかし、一人の料理人の人生ではかなえられないロマンを、たぎらせている。

リストランテ ホンダの20年
愛知県産のブランド鴨・恵鴨を、骨付きでじっくり火を入れ、皮目に蜂蜜でローズマリー、タイムなどのエピスをまとわせ、上火でクリスピーに仕上げている。鮮烈な風味のイタリア産のマスタードで作る柿のモスタルダと共に。

●リストランテホンダ
東京都港区北青山2-12-35 小島ビル1F
TEL 03-5414-3723
ristorantehonda.jp

※『Nile’s NILE』2025年1月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「Nileport」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。