一食のコースの中で、フランスへ行ったり、日本へ戻ったり、あるいは、どこの国ともいえないようなエキゾチックな口福も感じたり、浮遊感のある楽しい旅を続けているような印象さえ受ける。寿司という食べ物をこんなに胸弾ませる楽しい食事にできるのかということに、改めてアレノ氏の懐の深さと引き出しの多さに感心させられる。
ご自身の寿司との出会いは?と聞いてみると「著書のライターであったジャーナリストの故・増井和子さんに私は日本の食の素晴らしさを教えてもらいました。寿司にしても同様です。あるとき、横浜の『鮨水谷』(現在は閉店)に連れて行ってもらったのですが、これまで食べてきたどんな寿司とも異なり、水谷さんの寿司から離れられなくなったのです。それから1週間、水谷さんの家に泊めてもらい、市場に同行し、仕込みをすべて見せてもらい、夜はビールを一緒に飲んで過ごしました。その1週間で寿司というものに向き合う姿勢、しゃりの切り方や包丁の仕方から、酢で締めたり、漬けにしたりとすべての仕事の緻密さ、正確さに心底感銘を受けました。それで、いつか、自分の店でも寿司を出せたらと漠然と思うようになったのです」と。
そして、その夢物語が実現したのは2018年。パヴィヨンという歴史的な建造物の中にあるアレノ氏の店の1階を寿司レストランにした。当時はフランス人が寿司レストランを出すということで、業界中が反対したという。しかし開業後、半年(2019年)でミシュランの二つ星を獲得。アレノ氏の前菜、職人による江戸前の握り、最後はデセールというスタイルの寿司店がパリで認められたのだ。
フランス・パリ、モナコに続く3店舗目となる「ラビス」。必ずや新感覚の寿司体験ができる、新しい舞台。ラグジュアリーなフォーシーズンズホテル大阪の空間とともに、特別のひとときを過ごしに出かけたい。