星のや東京は、東京のホテル業界に新たな風を吹き込み、「旅館」の概念を刷新した。東京・大手町にそびえる「塔の日本旅館」というこれまでにない新しい温泉リゾートは、玄関で履物を預けた瞬間から、陰影と四季を尊ぶ和のおもてなしが始まる。都心のラグジュアリーホテルや地方の高級旅館とは異なる、独自の心地よい時間が流れる空間を提供している。
この体験のハイライトとなるのが、ディナーコース「Nipponキュイジーヌ~美食の集い~」である。2023年10月に総料理長となった岡亮佑シェフが厨房を率いており、日本各地の食文化をフランス料理の技法で表現した11皿のコースを監修。江戸時代の「参勤交代」に着想を得て、日本各地で育まれた食文化をフランス料理の技法で表現するオリジナルのコースだ。季節ごとに焦点を当てる地域を変え、旬の味覚を存分に楽しめる構成となっている。
秋のコースでは、秋刀魚を使った蒲焼き風の一皿が提供され、軽やかで香ばしい胡麻と卵白の生地と、梅干しの酸味が秋刀魚の脂の甘みを引き立てる。さらに、岡山の「ママカリ」は、バルサミコ酢とカラマンシービネガーでアレンジし、キャビアとフレッシュチーズを合わせた一皿に昇華されている。福岡の「水炊き」もフランス料理の技法で再構築され、香りや深みのある味わいが広がる。
岡シェフは「どの土地にも豊かな食文化があり、アイデアは尽きない」と語り、シンプルに「おいしかった」と思える体験を目指している。
星のや東京では、畳や障子越しの光、大浴場での温泉など、東京・大手町にいることを忘れさせる特別な時間が流れている。非日常の中で、ふと都会にいることを思い出し、格別な非日常感に満悦するのだ。
●星のや東京
東京都千代田区大手町1-9-1
TEL 050-3134-8091
※『Nile’s NILE』2024年11月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています