野菜料理6種の盛り合わせ
たとえば今回紹介した、野菜料理6種の盛り合わせ。フェンネルで香りづけされた京ニンジンの細切り、自家製XO醤(エックスオージャン)と干し貝柱の風味で食べるサトイモ、自家製の発酵トウガラシで味付けしたレンコン、エビの卵を乾燥させた伝統調味料「蝦子(シャズ)」をからめた下仁田ネギ、塩漬けにしたアヒルの卵「鹹蛋(シェンダン)」の黄身とともに炒めたカボチャ、豆腐の発酵食品「腐乳(フウルウ)」のソースをかけた花ニラが一皿に盛り込まれる。
辛さ、凝縮した旨み、まろやかなコクなど変化に富んだ味がはっきりと感じられ、一つずつの料理は少量であるにもかかわらず、いずれもが強い印象を残す。
また、「素材については旬のものを自由に選びます。ただし味付けは、中国料理から外れたくない」と湯浅氏。
前菜のフグの茶碗蒸しでは、中国伝統の酸辣味のあんをかけた。
「フグはポン酢ともみじおろしで食べるのがおいしいと知っているので、同じ”酸味„と”辛み„の組み合わせである酸辣味のあんをかけました。日本料理には負けたくないんです(笑)」
黒酢の酢豚
一方で、明確なテーマのもと、伝統料理で新しい表現をすることも。
今回紹介した黒酢の酢豚のテーマは、「肉のおいしさ」。そのために、まずは肉を塊でしっとりとゆで、ジューシーな食感に仕立てる。その上で薄く衣をつけて揚げ、ややサラリとしたタレをからめて完成。
「肉の味が生きるよう、タレは軽やかに。コースの最後にフカヒレ料理を提供するので、それまでに口やおなかが疲れないように、という狙いもあります」