スジアラの料理
今回紹介したスジアラの料理は、その好例だ。今回は4.8kgの大きさで、脂のよくのったスジアラを使用。分厚く切り、皮はサクッと仕上げ、その下のゼラチン層も焼ききり、かぐわしい香りを引き出す。そして身は、ちょうど「生か火が入ったか」という、しっとりかつなめらかな状態にピンポイントで仕上げている。
実際の調理方法は以下の通り。まずは厚みを持たせて切ったスジアラの切り身に金串を打ち、皮面のみを高温に熱した油に注意深く浸して火を入れる。「中国人が伝統的に好む、パリッとした『脆』というテクスチャーを作ります」と田村氏。
その後は、高温のオーブンに1分半入れたら1分半出す、という作業を3回ほどくり返すことで、狙い通りの状態に身を仕上げる。いわば、皮と身を分解して考え、それぞれに最適な火入れを施す手法だ。
ウズラの丸揚げ
ウズラの丸揚げを茶葉で燻(いぶ)して仕上げる料理は、中国の伝統を色濃く感じせる一品だ。「中国では茶葉と生米で肉を燻すことが多々あります。鴨を燻した四川の樟茶鴨(ズィヤンチャーヤー)が有名で、この料理も、そのイメージから出発しました」
ここでは、中国の伝統的な鳥の丸揚げ(皮を徹底的にパリッと仕上げるのが特徴)の技術を使い、ウズラを調理。その後、茶葉で燻す。そして用いるのは、埼玉県で飼育されているフランス種のウズラ。豊かな旨みと柔らかく繊細な肉質が特徴で、その肉質を最大に生かすよう加熱しすぎず、しっとりと仕上げている。