シチリアの魅力を楽しく伝え続ける
今や日本でも、すっかり人気ジャンルとして確立しているシチリア料理。その立役者といえば、石川勉氏である。
石川氏がシチリアで修業をしたのは1984年から1年間。
「行ってすぐにシチリアの魅力に心奪われました。海岸を列車で移動したのですが、右は真っ青な海、左は濃い緑、その中に色鮮やかなオレンジとレモンがたわわに実る……。そんな絵のような光景を、今もはっきりと覚えています」
修業先はシチリア第一の都市、パレルモ近くのリゾートビーチにある名店「チャールストン」。1年間を過ごした。この時の仲間とは今も深い繋がりを持つ。折に触れて連絡を取り合う家族のような間柄だ。
帰国した石川氏に、シェフとして腕をふるう機会が訪れたのが西麻布「ラ・ベンズィーナ」のシェフになった時だ。
「でも、当時の東京は、シチリア料理に絞るのはマニアック過ぎという状況。『シチリアといえばこれ!』のイワシのパスタも、評判がいまいち(笑)。なので“南イタリア”というカテゴリーを打ち出し、その中で、少しずつシチリアを充実させていく戦略でした」
商社と掛け合い、当時はほぼ皆無だったシチリア産のオリーブオイル、塩、ケイパー、アンチョビ、パスタなどを、徐々に輸入してもらうように。充実したシチリア料理を作れる環境を整えていった。