進化を続ける料理人
八千代黒牛に、フォアグラとトリュフを肉が見えないくらいたっぷり載せて。これぞ「レストランキノシタ」といえるサービス精神旺盛な一皿だ。だから、キノシタ通いはやめられない。
「お客様から『ここの料理を食べるために仕事頑張って、また来るよ』と言われるのが、涙が出るくらいうれしいんです。誰にも迷惑をかけず、自分の好きな仕事をして、感謝される。こんないい仕事はないですよ。だから健康にも気を使って、少しでも長く続けるのが目標」と木下和彦氏。これほど純粋な60歳もそういない。
中学時代は陸上の長距離選手。だがその後は「渋谷の親戚の元に身を寄せて、屋台をしたりぶらぶら」していたと言う。料理人を目指し、フランス料理店に入ったのは30歳も間近の頃。「フランス料理店のシェフって、格好よくてモテそう」という不純な動機だった。