好きなのは、王道現代フレンチ
クラシックな中に、モダンな要素も織り込んだフランス料理。ソースにもメインにも存在感がありながら、アクセント的に現代的な洗練もある。それが、僕が好きな料理です。
この軸を保ちながら、自分の中では、冷たい料理と温かい料理とで料理の表現を変えています。
冷たい品ではモダンさ、盛り付けや器の美しさを意識。温かい品は食材をグッと前に出し、しっかりとしたソースを合わせるのが好きです。
今回紹介した2品(次ページ)にもそれが当てはまります。
カニの前菜は、根セロリのサラダの上に、ほぐしたタラバガニを野菜のせん切りとあえて盛り、蕪(かぶ)のエスプーマ、ビーツやラディッシュとともに仕立てた一品。いずれも冬に味に旨みを増す、根菜とカニのマリアージュを楽しんでいただきます。
一方の「エスカルゴと骨髄、牛胃のロースト、赤ワインのピュレソース」は、20年来のスペシャリテ。骨髄の中にこんがりと焼いたトリッパとエスカルゴを詰め、酸味をきかせた赤ワインソースを流し、骨髄をのせます。ブルゴーニュでの修業先「エキュソン」の料理をベースに、自分が大好きな食材、トリッパを加えて仕立てました。フランスから帰る機内で考えた、思い出深い料理です。
函館愛と、母が作る鮭の飯寿司
故郷は函館です。地元への愛情は人一倍強いですよ。年に2、3回は帰って親の顔を見て、あと、地元の友達と飲んだり食べたり。
過ごしたのは18歳までですが、函館は本当に大好きです。
実家は「菊地商店」という、食品からお総菜、お酒、雑貨まで幅広く扱う店を営んでいます。子どもの頃、両親は朝から夜まで忙しくしていて、店は日曜も営業。休日は元日のみ。
そんな中でも母は料理が大好きで、手を抜かずおいしいものを作ってくれました。そして、僕はそれを食べるのが大好き。男三兄弟なので、餃子なんて200個も作るんです。それを長男の僕が100個食べるという(笑)。
あと、土曜は学校から帰ってきたら、店からウィンナーなど好きなものをとってきて自分で炒めて昼ごはんを作ったりも。高校生の時は、自分と弟の弁当は僕が作っていましたね。そんな感じで、自然と食に親しむ環境にありました。
母の料理は昔から好きですが、今も食べるたびにしみじみ感動するのが、冬に作る鮭の飯寿司(いずし)やニシン漬けです。
北海道の郷土の味ですが、母が作るものは本当においしく、僕が通信販売を手がけたいくらい。菊地商店で売っているので、地元の知人や冬に函館に行く人には本気で勧めています。
気分転換は本。小説でもエッセイでも
気分転換に、よく本を読みます。例えばディナーの営業で料理を作り終わって一段落したら、ワインセラーにこもって読みかけの小説に手を伸ばしたり。お客様のお見送りまでの、ちょっと空いた時間に読むんです。忙しい時は無理ですが、通常の時、本はとても身近な存在です。
読むのは小説やエッセイが多く、ジャンルは問いません。『下町ロケット』、『ハゲタカ』のような現代物、『項羽と劉邦』などの歴史物、『ハリー・ポッター』シリーズなど海外物、村上春樹、吉田修一などのベストセラー作家、などなど。たまにテーマを決めて集中的に読むことも。
去年は「近代を読もう!」と思い立ち、『金閣寺』『伊豆の踊子』『羅生門』を続けて読んだのですが、ちょっと進みが遅かった(笑)。
読んだ本は、手帳に題名をメモしておきます。書いておかないと、意外と忘れてしまうでしょう? 去年読んだ本、一昨年読んだ本の一覧を見直すのもまた、楽しいものです。