誠実に、一歩ずつ
ブルガリ銀座タワーにオープンするリストランテのシェフに就任したのを機に、来日したルカ・ファンティン氏。当時30歳。2019年で10年の節目を迎える。
ファンティン氏の料理を形作っているのは、イタリア料理のベース、食材(特に日本の食材)への理解、そして現代的なセンス。食材や料理に対する心構えは、穏やかで誠実な人柄そのまま。現代的な技術、演出を用いる際も、それは「料理の味のため」という目的の中でのこと。表現や技術の面での挑戦を続けながら、あくまでも食材と味に寄り添う姿勢が、氏の料理では貫かれている。
このように料理と向き合いつつも、新しい世界との出会いも求め続けるファンティン氏。ここ数年は世界各国のトップシェフとのコラボレーションイベントを定期的に開催し、スペイン、南米、オーストラリア、アメリカ、アジア……それこそ世界中のシェフと組んでの精力的な活動を続ける。
そのバックボーンにあるのは、「常に新しいことにチャレンジして、成長したい」という生来の情熱。日本に来たのもチャレンジであったし、その前の修業時代もチャレンジと旅の連続であった。
まずは母国イタリアでの修業を経て、モダンガストロノミーでもっとも勢いがある国、スペインに渡った。そして「アケラレ」や「ムガリッツ」など、トップシェフの厨房で修業を重ねた後、「龍吟」山本征治氏のサンセバスチャンの料理学会での発表に感銘を受け、東京の同店で研修。
その後はイタリア・ローマにて、ミシュラン三つ星の「ペルゴラ」ハインツ・ベック氏のもと、スーシェフとして働いた。こうして積極的に新しい土地へ出かけ、ステップアップを重ねる20代を過ごしたうえでの来日、シェフ就任、そしてこの10年の活躍がある。
「ここ数年、毎月のようにあちこちの国に出かけて仕事をしています。刺激的で楽しいのですが、ちょっと忙しすぎるかもしれませんね」と笑う。
実力と発信力を兼ね備えたファンティン氏には、ますますの活躍と飛躍が期待されている。誠実に、一歩ずつ向上する氏とその料理から、目が離せない。
ルカ・ファンティン
1979年イタリア・トレヴィーゾ生まれ。スペインの「アケラレ」や「ムガリッツ」で修業、ローマ「ペルゴラ」にてスーシェフを務める。2009年より「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」のエグゼクティブシェフ。2011年よりミシュラン一つ星を保持し、今年の「アジアのベストレストラン50」で28位にランクインする。
●ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン
東京都中央区銀座2-7-12
ブルガリ銀座タワー9F
TEL 03-6362-0555
www.bulgarihotels.com
※『Nile’s NILE』2018年12月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています