チャレンジを止めない

ジェエリーの名門ブランド、ブルガリのリストランテでエグゼクティブシェフを務めるルカ・ファンティン氏。このリストランテに、「モダンでクリエーティブな、東京を代表するイタリア料理店」という評価を定着させた実力の持ち主である。国内外でエネルギッシュに活躍し、評価と存在感を高めている。

Photo Masahiro Goda  Text Izumi Shibata

ジェエリーの名門ブランド、ブルガリのリストランテでエグゼクティブシェフを務めるルカ・ファンティン氏。このリストランテに、「モダンでクリエーティブな、東京を代表するイタリア料理店」という評価を定着させた実力の持ち主である。国内外でエネルギッシュに活躍し、評価と存在感を高めている。

ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン、ウニをたっぷり使ったスペシャリテ
日本で出合った食材の一つ、ウニをたっぷり使ったスペシャリテ。ソースは軽く加熱したウニや、ホタテのブロード、魚のブロード、トマトを入れて、乳化させたもの。最後に塩、レモンの皮のすりおろしをふる。ウニの風味を強く感じる、厚みと深みがある味わい。

誠実に、一歩ずつ

ブルガリ銀座タワーにオープンするリストランテのシェフに就任したのを機に、来日したルカ・ファンティン氏。当時30歳。2019年で10年の節目を迎える。

ファンティン氏の料理を形作っているのは、イタリア料理のベース、食材(特に日本の食材)への理解、そして現代的なセンス。食材や料理に対する心構えは、穏やかで誠実な人柄そのまま。現代的な技術、演出を用いる際も、それは「料理の味のため」という目的の中でのこと。表現や技術の面での挑戦を続けながら、あくまでも食材と味に寄り添う姿勢が、氏の料理では貫かれている。

このように料理と向き合いつつも、新しい世界との出会いも求め続けるファンティン氏。ここ数年は世界各国のトップシェフとのコラボレーションイベントを定期的に開催し、スペイン、南米、オーストラリア、アメリカ、アジア……それこそ世界中のシェフと組んでの精力的な活動を続ける。

そのバックボーンにあるのは、「常に新しいことにチャレンジして、成長したい」という生来の情熱。日本に来たのもチャレンジであったし、その前の修業時代もチャレンジと旅の連続であった。

まずは母国イタリアでの修業を経て、モダンガストロノミーでもっとも勢いがある国、スペインに渡った。そして「アケラレ」や「ムガリッツ」など、トップシェフの厨房で修業を重ねた後、「龍吟」山本征治氏のサンセバスチャンの料理学会での発表に感銘を受け、東京の同店で研修。

その後はイタリア・ローマにて、ミシュラン三つ星の「ペルゴラ」ハインツ・ベック氏のもと、スーシェフとして働いた。こうして積極的に新しい土地へ出かけ、ステップアップを重ねる20代を過ごしたうえでの来日、シェフ就任、そしてこの10年の活躍がある。

「ここ数年、毎月のようにあちこちの国に出かけて仕事をしています。刺激的で楽しいのですが、ちょっと忙しすぎるかもしれませんね」と笑う。

実力と発信力を兼ね備えたファンティン氏には、ますますの活躍と飛躍が期待されている。誠実に、一歩ずつ向上する氏とその料理から、目が離せない。

ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン ルカ・ファンティン氏

ルカ・ファンティン
1979年イタリア・トレヴィーゾ生まれ。スペインの「アケラレ」や「ムガリッツ」で修業、ローマ「ペルゴラ」にてスーシェフを務める。2009年より「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」のエグゼクティブシェフ。2011年よりミシュラン一つ星を保持し、今年の「アジアのベストレストラン50」で28位にランクインする。

●ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン
東京都中央区銀座2-7-12
ブルガリ銀座タワー9F
TEL 03-6362-0555
www.bulgarihotels.com

※『Nile’s NILE』2018年12月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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