藤原さんは今、日本人の持つ幼少期の思い出や、四季折々の自然を映す原風景を彷彿とさせる、言い換えれば食べ手の心に懐かしい心象風景を描き出す料理に腕を振るう。だから季節の食材を大事にする。
「ずっと使っている食材に、たとえば島根・匹見のわさびがあります。清流・高津川沿いの渓流式と呼ばれるわさび田で育てられていて、うちではパスタにあえています。また春と言えばサヨリだし、郷土の食材、三島独活もおいしい。独活の株にわらと干し草を重ねて、発酵熱で育てられるんです。あと最近は、ドライフラワーをよく使いますね」
そんな藤原さんの胸には、今も商売熱心だった祖母の言葉が刻まれている。
「お客様の後ろには、大勢のお客様がいらっしゃる」
この一言こそが、客を裏切らない「Fujiya 1935」のDNAだと感じた。
藤原哲也 ふじわら・てつや
1974年生まれ。24歳で渡伊。2年の修業の後スペインへ。「レスグアルド」での1年の勤務を経て帰国。2003年に「Fujiya 1935」をオープン。12年には料理のコンセプトを一変させ、同時に店の大幅な改装を行った。ミシュラン三つ星を獲得。
●Fujiya 1935
大阪市中央区鎗屋町2-4-14
TEL 06-6941-2483
fujiya1935.com
※『Nile’s NILE』2020年5月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています