記憶に残る昭和の味、平成の味

料理人たちにとって記憶に残る「昭和の味、平成の味」とは? 今回は、三科惇さん、厲愛茵さん、山田チカラさん、フィリップ・ミルさん、杉本壽さんに伺った。

Photo Haruko Amagata. Masahiro Goda  Text Rie Nakajima. Izumi Shibata. Junko Chiba

料理人たちにとって記憶に残る「昭和の味、平成の味」とは? 今回は、三科惇さん、厲愛茵さん、山田チカラさん、フィリップ・ミルさん、杉本壽さんに伺った。

フィリップ・ミル フィリップ・ミル 東京

フィリップ・ミル 東京 フィリップ・ミル氏

私の故郷は、パリからTGVで西に1時間ほど行った場所にあるルマンという街です。農業が盛んなエリアで、わが家の庭にも菜園がありました。私は小さい頃から家族で食卓を囲む時間が大好きで、ポトフのように皆で分けあう料理の日はひと際うれしかったです。特にポトフは、前日から素材を煮て、1日かけて食べ、残ったブイヨンでパスタを仕立てるのも楽しい。たっぷり食べられる安心感、皆で共有する平和な気持ちに包まれたことを、よく覚えています。
今も、大勢で分け合う料理は好きです。例えば、骨付きの仔羊肩肉の塊を1日半かけて煮込んだ、ビストロの定番料理。スプーンですくえばホロリと骨から外れるほど肉が柔らかくなっているので、テーブルの中心にドンと肉を置き、それぞれが好き好きにすくい取る。骨の際の肉が一番おいしいのを誰もが知っていて、それを仲間や家族と一緒に食べる。幸せそのものです。
職業人としては、15歳で見習いに入ってからフランス料理のクラシックを習得し、経験を重ねてからは分子ガストロノミーがもたらした料理の進歩の中に身を置いて、常に自分の能力をより確かなものにする道を歩んできました。
2017年に東京の店がオープンしてからは、日本の食に深く触れる機会が増えています。特に印象に残っているのは、京都で食べたズワイガニの炭火焼きです。殻ごと焼き、柑橘を搾って食べるというシンプルさでありながら、味わい深く、香り高い! 単純さの中にある奥深さに驚きましたし、こうした発見をもっと重ねていきたいと思っています。

●フィリップ・ミル 東京 フィリップ・ミル

フィリップ・ミルさんの想う「令和の味」
ハーモニーは個性をつくる

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。