日本固有の食材の多様性を追求

日本料理だからといって、食材は国産がいいとは限らない。師から受け継いだ確かな技術と目をもって、鱧のような日本の古くからの食材でも、優れたものならば外国産を、その主役に据える。三科惇氏の新時代への覚悟が込められた一品がこの鱧料理だ。

Photo Haruko Amagata  Text Rie Nakajima

日本料理だからといって、食材は国産がいいとは限らない。師から受け継いだ確かな技術と目をもって、鱧のような日本の古くからの食材でも、優れたものならば外国産を、その主役に据える。三科惇氏の新時代への覚悟が込められた一品がこの鱧料理だ。

昭和の料亭の時代を経て、平成の半ばから小さなカウンター割烹や和食店が増えてきた。

それとともに、決まりごとの多い日本料理が、より柔軟な料理人のアイデアが生きるイノベーティブな世界に変わった。その中では、料亭で大勢の客を扱い修業を積んだ時代と違い、料理人の技術が伸びにくくなっているのではないかと三科氏は心配する。

「僕自身は、親方の石川秀樹さんや兄弟子である『虎白』の小泉瑚佑慈さんに出会い、料理だけでなく人間的にもいろいろ学ばせてもらって、こうして店も任せていただいています。本当に、なかなかないことです」

今回、鱧を選んだのは、そうした恵まれた境遇への感謝の思いからでもある。

「平成は神楽坂でおやっさんや瑚佑慈さんと一緒にやらせてもらって、去年、蓮が銀座に移転しました。令和は僕にとって、“親元”である神楽坂から離れて、銀座で再スタートを切った、まさに新しい時代です」

一貫しているのは「これが一番、性に合う」という三科氏の料理の「潔さ」。
伝統を大切に受け継ぎつつ、変化を恐れず、とにかく旨いものを食べてもらいたいと考えたその料理が、令和の日本料理の新風となる。

蓮 三科 惇氏

三科 惇 みしな・じゅん
1983年神奈川県生まれ。神楽坂「石かわ」の石川秀樹氏のもとで修業を積み、小泉瑚佑慈氏と「虎白」の立ち上げから参加。2009年石川氏からカウンターが中心の店、神楽坂「蓮」を任される。2018年6月に「蓮」を銀座に移転。『ミシュランガイド東京2019』では二つ星を獲得している。最近ではシンガポールで、6日間で300人のゲストに料理を振る舞うイベントを成功させた。

●蓮
東京都中央区銀座7-3-13
ニューギンザビル1F・B1
TEL 03-6265-0177
ginza-ren.jp

※『Nile’s NILE』2019年8月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。