飯塚隆太
リューズ
調理師専門学校の研修旅行でフランスに行き、その時にトゥールダルジャンのパリ本店で食べる機会がありました。オーダーしたのは、スペシャリテの一つ「フォアグラ三皇帝風」です。新潟時代にフォアグラのテリーヌは食べたことがありましたが、子供にとっておいしいものではなかったのです。それがトゥールダルジャンのフォアグラは、まだまだ子供の19歳の僕の舌でも「旨い」と思う感動する味だった。改めて世の中で“旨い”と言われているものは、万国共通、誰が食べても旨いって思えるものなんだぁ~と感動したのを覚えています。
平成に入ってからの衝撃的な味は、徳島の料亭「青柳」のアオリイカのお造りです。恵比寿のシャトーレストラン ジョエル・ロブションで青柳さんとの大きなイベントがありました。その時、青柳さんたちが調理場として使ったのが、ちょうど僕がスーシェフをしていた1階の「カフェフランセ」です。僕は調理場のアテンド役として青柳チームに3日間つきました。青柳には小山裕久さんはもちろん、かんだの神田裕行さん、龍吟の山本征治さんがいらして。
最終日にイベントで提供したお互いの料理を交換して食べることになった時に、山本さんが作ってくれたのが、アオリイカと鳴門鯛のお造りです。青柳のアオリイカといえば、分厚いアオリイカに蛇腹に包丁を入れるんです。これを口に入れた瞬間、イカがこんなに旨いのかと愕然としました。はらっとほどけるテクスチャーやねっちりとした甘みなど、包丁技によってこんなに味に違いが出るのかと驚き、日本料理の包丁技に興味を持つきっかけになりました。
●飯塚隆太
リューズ
飯塚隆太さんの想う「令和の味」
時代と、自分のルーツ」