料理人たちの昭和の味、平成の味 Ⅰ

料理人たちにとっての「昭和の味、平成の味」とは? 今回は、神田裕行さん、飯塚隆太さん、岸田周三さん、小林武志さんに伺った。

Photo Masahiro Goda. Haruko Amagata 

料理人たちにとっての「昭和の味、平成の味」とは? 今回は、神田裕行さん、飯塚隆太さん、岸田周三さん、小林武志さんに伺った。

料理人たちの昭和の味、平成の味
左から。リューズ 飯塚隆太さん/カンテサンス 岸田周三さん/赤坂 桃の木(御田町 桃の木)小林武志さん/日本料理 かんだ(元麻布 かんだ)神田裕行さん。

神田裕行
日本料理 かんだ(元麻布 かんだ)

かんだ 神田裕行氏

昭和の時代に料理人になって、初めて食べて感動したのがフォアグラです。その濃厚な味わいにこんな食べ物があるのかと、驚きましたね。最初に修業をしたのが大阪ミナミの「喜川 昇六」です。この店では、和風コロッケとか、すき焼きとか、松茸のフライとか、つまり食べ手の味覚に合わせて柔軟に調整するのが“浪速割烹”の真骨頂だという洗礼を受けました。
その後、大阪からパリに出た僕にとっての一番のごちそうは、ホテル日航の分厚い食パン。23歳の若者にとって、パンといえばふわふわの日本の食パンのことで、当時はフランスパンがどうしても好きになれなかったですね。ホテルのカフェでフォアグラのテリーヌと厚い食パンを別々にオーダーして、自分で食パンの上にフォアグラをのせて、そこにマンゴーやイチゴのジャムをつけて、アグッて食べていました。これが本当においしかった。まさに昭和の修業時代の思い出の味です。
平成の時代に入って、徳島の料亭「青柳」の料理に出合えたことも、まさにエポックメーキングでした。今、振り返ると、この頃までは和食のおいしさというものがわかっていなかったように思います。たとえばお吸い物の味もきちんと理解できたのは「青柳」で修業して、おいしさの定義を自分の中で持てるようになってからではないでしょうか。

●神田裕行
日本料理 かんだ(元麻布 かんだ)

神田裕行さんの想う「令和の味」
Steps to essence

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
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