活気の奥の危機感と責任感 後編

ヴィーガン分野の第一人者でもある「The Burn」の米澤文雄氏は、オンラインサロンや出版などを通じて若い料理人の教育にも力を注いでいる。

Photo Haruko Amagata  Text Izumi Shibata

ヴィーガン分野の第一人者でもある「The Burn」の米澤文雄氏は、オンラインサロンや出版などを通じて若い料理人の教育にも力を注いでいる。

  • The BurnThe Burn
    地下鉄青山一丁目駅から直結する立地。店舗があるのは地下1階だが、ビルの造りの関係上、地上の開放感が届く場所。ガラスで覆われた店内は、広々とした印象だ。
  • The BurnThe Burn
    定番のワインに加え、カクテルもザ バーンでは人気。リキュール類も他種そろえ、さまざまなオーダーに対応する。アペリティフに、食中に。N.Y.スタイルの店らしくお客は自由に楽しむ。
  • The Burn
  • The Burn

活気の奥の危機感と責任感 前編 より続く

ところで米澤氏が日々取り組んでいるのは、The Burnの充実だけではない。食を取り巻く環境のよりよい未来のための活動にも力を注ぐ。

たとえば、米澤氏は2019年にヴィーガンの専門レシピ本を出版し、この分野の第一人者としても知られるようになった料理人だが、彼がヴィーガンを追求するのは「野菜の食べ方の多様性を広げたい、伝えたい」という思いによるもの。そしてそれは、自然環境の保護にもつながる思想なのだ。

今、畜産業は“牛がメタンガスを排出する”、“大量の飼料を消費する”などと言われ、自然環境に負荷を与えていると問題視されている。そのため、プラントベースの肉や人工的に培養した肉の開発が進むなど、食の業界では“脱・肉食”に向けた流れが本格化している。「僕は、人類が完全に肉食をやめることはないと思っていますが、消費がグッと減ることは確実と考えます。その時、野菜でも味のよさや満足感を備える料理を作ることができると、示せるようにしておきたいのです」と話す。

「SDGsは2030年に設定目標を達成すると定めていますが、個人的にはその動きは25年ごろから加速すると思っています。人は5年以上の将来を具体的に考えることはなかなかできませんから」

だからこそ、この3〜4年は準備期間として加速に備えるのが大事だという。

「ヴィーガンの料理も、25年を意識することで、より具体的な年次の目標が立てられます。そうすれば去年より今年、今年より来年、確実に内容を向上させたり、人々の間に浸透させることができるはずです」

1 2
ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。