活気の奥の危機感と責任感 前編 より続く
ところで米澤氏が日々取り組んでいるのは、The Burnの充実だけではない。食を取り巻く環境のよりよい未来のための活動にも力を注ぐ。
たとえば、米澤氏は2019年にヴィーガンの専門レシピ本を出版し、この分野の第一人者としても知られるようになった料理人だが、彼がヴィーガンを追求するのは「野菜の食べ方の多様性を広げたい、伝えたい」という思いによるもの。そしてそれは、自然環境の保護にもつながる思想なのだ。
今、畜産業は“牛がメタンガスを排出する”、“大量の飼料を消費する”などと言われ、自然環境に負荷を与えていると問題視されている。そのため、プラントベースの肉や人工的に培養した肉の開発が進むなど、食の業界では“脱・肉食”に向けた流れが本格化している。「僕は、人類が完全に肉食をやめることはないと思っていますが、消費がグッと減ることは確実と考えます。その時、野菜でも味のよさや満足感を備える料理を作ることができると、示せるようにしておきたいのです」と話す。
「SDGsは2030年に設定目標を達成すると定めていますが、個人的にはその動きは25年ごろから加速すると思っています。人は5年以上の将来を具体的に考えることはなかなかできませんから」
だからこそ、この3〜4年は準備期間として加速に備えるのが大事だという。
「ヴィーガンの料理も、25年を意識することで、より具体的な年次の目標が立てられます。そうすれば去年より今年、今年より来年、確実に内容を向上させたり、人々の間に浸透させることができるはずです」