美食のバスク 後編

イエズス会を創設し、キリスト教布教のため東洋に向かったバスクの男たち。働くことの価値を守り、頑固だが革新性に富んだ彼らは食の世界をも変えた。

Photo Chiyoshi Sugawara Text Chiyoshi Sugawara

イエズス会を創設し、キリスト教布教のため東洋に向かったバスクの男たち。働くことの価値を守り、頑固だが革新性に富んだ彼らは食の世界をも変えた。

バルから生まれる新しい料理

  • ピンチョス3 ピンチョス3
    (右上)カウンターに並ぶピンチョスの皿。グロス地区の超人気店、ベルガラがこの陳列法を始めた。
    (右下)ラタトゥイユにカタクチイワシをのせてミルフィーユ風にした、バル・ベルガラの一品。
    (左上)カウンターに並ぶほか、温かいピンチョスや注文を受けてから調理する料理は黒板に板書
    (左下)皿のヒルダ。酢漬けの唐辛子とオリーブの実、アンチョビの串刺しはピンチョスの元祖
  • ピンチョス4 ピンチョス4
    (右上)串止めされているとはいえ、無事に口まで運ぶことが難しそうなピンチョスも。
    (右下)ピクルスにツナ、アンチョビ、酢漬けの玉ねぎのみじん切りを挟んで、オリーブの実を添えた。
    (左上)スペインのバルではポピュラーなトルティージャ(スパニッシュオムレツ)のベルガラ版
    (左下)キノコが名物のガンバラのカウンターでは、季節ごとに並ぶキノコの種類が変わる
  • ピンチョス3
  • ピンチョス4

シンプルな串刺しもエビを始めさまざまな食材が加わって次第に華やかになり、加えて分子料理などフェランの影響もあってエンターテインメント性が加味され、レストランで供されるような手の込んだ小皿料理は爆発的な人気となった。つまみの概念も越え串刺しの垣根も越えてしまったのだ。
 
カウンターにズラリと並んだピンチョスは実に壮観で、客が好みで選べるようなスタイルにしたのもサンセバスティアンのバルが発祥だ。バルに不慣れな観光客にとっても便利なシステムと言え、バルのハシゴを楽しくしている。
 
そう、バルの楽しみ方の神髄はハシゴにあり、サンセバスティアンの大きな観光要素でもある。1、2杯、1、2品で次のバルへというのが楽しみ方のコツで、混んでいる店ではピンチョス選びに時間はかけられない。カウンターに潜り込み、店員と目が合ったら素早く飲み物を注文し、その間にピンチョスを選ぶのがポイントである。その店の人気メニューをあらかじめチェックしておくことも大事で、まごまごしていると何も口にできないことにもなりかねない。

今日もまた、バルのカウンターには食欲をそそる新しい料理が並んでいるに違いない。ファン・マリ・アルサックは言う。「バルのピンチョスの進化が止まることはないだろう」

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。