春は、ルガーナワイン

春の訪れを祝うのにちょうどいい、フレッシュで陽気な、洗練された白ワインがある。古代からバカンスの地として人気があり、オペラ歌手のマリア・カラスも別荘を持ったというイタリア最大の湖、ガルダ湖畔で生まれたワイン「ルガーナ」だ。

Text Rie Nakajima

春の訪れを祝うのにちょうどいい、フレッシュで陽気な、洗練された白ワインがある。古代からバカンスの地として人気があり、オペラ歌手のマリア・カラスも別荘を持ったというイタリア最大の湖、ガルダ湖畔で生まれたワイン「ルガーナ」だ。

右からルガーナ・ヴェンデンミア・タルディーヴァ、ルガーナ・リゼルヴァ、ルガーナ・スペリオーレなど。タイプごとに異なるアロマや味わいを楽しみたい。
右からルガーナ・ヴェンデンミア・タルディーヴァ、ルガーナ・リゼルヴァ、ルガーナ・スペリオーレなど。タイプごとに異なるアロマや味わいを楽しみたい。

北イタリアのミラノ近郊には大小の湖が点在する湖水地方があり、イタリア国内やヨーロッパの人たちがバカンスを楽しむ場所として親しまれている。高級別荘地として有名なコモ湖もそのひとつだが、イタリアで最大の面積を誇るのがガルダ湖だ。

温暖な気候に恵まれたことで古くから保養地として注目され、古代ローマ詩人のガイウス・ウァレリウス・カトゥルスやオペラ歌手のマリア・カラスの別荘があったことでも知られている。周辺には温泉地のシルミオーネもあり、ミラネーゼが週末にリフレッシュする場所としても愛される風光明媚な地だ。

ルガーナワインは、このガルダ湖の南に広がる平野と丘陵地帯で造られている。ガルダ湖を削り取った氷河によってもたらされたミネラルを多く含む粘土土壌と湖からの風のおかげで、病害に強く、個性的な味わいの葡ぶ どう 萄をじっくりと成熟させることができるという。柑かん橘きつ類や白い花、かすかにスモーキーなアーモンドのアロマを持ち、強靭な酸とミネラルを感じさせる優雅で清せい冽れつな味わいは、春から夏の朗らかな気候によく似合う。

口当たりがよく果実味が強すぎないため、イタリアンはもちろん、鮨やてんぷら、しゃぶしゃぶといった和食をはじめ、焼き鳥などの脂分の多い食事にも調和する。この季節には常に冷蔵庫にキープしておきたいワインだ。

ルガーナが生み出されるガルダ湖畔の葡萄畑。温暖な気候とミネラル豊富な粘土質の土壌が個性豊かでフレッシュな味わいを生み出す。
ルガーナが生み出されるガルダ湖畔の葡萄畑。温暖な気候とミネラル豊富な粘土質の土壌が個性豊かでフレッシュな味わいを生み出す。

ルガーナワインは、トゥルビアーナ(別名トレッビアーノ・ディ・ルガーナ)という葡萄の品種から造られる。五つのタイプによって異なる顔を持つのも特徴で、その最も重要なワインがルガーナ。柑橘類と白い果実、白い花のフレッシュな香りと味わいを持ち、幅広い料理にマッチする。ルガーナ・スペリオーレは1年以上熟成させたルガーナで、白桃や黄桃、オレンジなどの香りと、アーモンドやハーブの複雑な味わいが魅力。

魚介類のパスタや魚料理とともに楽しみたいワインだ。6カ月の瓶熟成を含む最低2年の熟成を経たルガーナはルガーナ・リゼルヴァと呼ばれ、洋梨やパイナップルの熟した果実のアロマにスパイスが混ざった、豊かな味わいが特徴。エレガントな甘口ワインのルガーナ・ヴェンデンミア・タルディーヴァは、10月末から11月初めの遅摘み葡萄を使用したワインだ。そして最後は、スパークリングワインのルガーナ・スプマンテ。ルガーナ特有の酸とミネラルの強さが引き立ち、アペリティフや食中酒として楽しめる。

現地では、ヨーロッパからバカンスに訪れた観光客がワイナリーでルガーナを大量に買い込んで帰るのが恒例だ。この人気がじわじわと広まり、ここ10年ほどで生産量が倍増し、日本でも注目され始めている。長期熟成能力も高く、10年以上熟成させることでビロードのようななめらかな口当たりとハチミツやドライフルーツの濃厚な香りをまとう。

春と夏の食卓をさわやかに彩る、北イタリア・ガルダ湖の宝石のような白ワイン。その魅力を日本でもいち早く満喫してほしい。

●ルガーナ協会 TEL+39-045-9233070 

※『Nile’s NILE』2021年4月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています

ラグジュアリーとは何か?

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