17世紀末、ドン・ピエール・ペリニヨンが「世界最高のワイン」を造ることを宣言して以来、シャンパーニュ界の頂点というべき不動の地位に君臨してきたドン ペリニヨン。最も優れた葡萄が収穫できた年にのみ、その個性を最大限に際立たせて生み出されるヴィンテージしか存在しないドン ペリニヨンにおいて、各ヴィンテージは伝統の精神を継承しつつ、その年ごとにイチから行われる献身的かつ芸術的な創造活動の賜物(たまもの)だ。このドン ペリニヨンならではの創造を、28年という長きにわたり率いてきたのが、醸造最高責任者のリシャール・ジェフロワ氏である。
すべてのプロセスにおいて絶えずリスクをとることにより、果実を究極の熟成へと押し進め、「アクロバティックなまでに大胆で並外れた才能」をもってその美学を体現してきたジェフロワ氏は、メゾンにとって燦然(さんぜん)と輝く星のような存在だった。ドン ペリニヨンの醸成過程で次々と現れる熟成のピークを見極め、P2、P3と段階的に表現して世に送り出したのも彼ならば、世界中の単一食材との対話や、アラン・デュカス、フェラン・アドリアら一流シェフを始め、デヴィッド・リンチ、ジェフ・クーンズといったアーティストとのコラボレーションに至るまで、多彩な試みによってかつてないほどにドンペリニヨンの世界を拡大し、洗練させたのもまたジェフロワ氏である。
そして、そのジェフロワ氏の下で13回の収穫に関わり、四つのヴィンテージ造りに携わってきたのが、後継者のヴァンサン・シャプロン氏だ。
卓越した知識や技術もさることながら、ジェフロワ氏がほかでもない、シャプロン氏を選んだ理由は、彼の精神性にあるという。歴史や自然から素直に感じ取り、学び続ける力、さらに感じたことを表現するアーティスティックな資質。そして、メゾンが追い求める美学やロマンに向かい、皆をまとめていく求心力を、シャプロン氏の中に見いだしたのだ。
2019年1月1日の引き継ぎを前に、この二人が共同して造り上げた「ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2008 レガシー エディション ギフトボックス」が11月にリリース。新旧の醸造最高責任者が知性と感性を融合させた集大成であるだけでなく、類を見ないシャンパーニュの当たり年といわれるヴィンテージ 2008は、評論家やワイン誌でも高評価を得る、「これぞシャンパーニュ」というべき傑作だ。
6月、ジェフロワ氏は彼の人生において欠くことのできない二人の人物と一堂に会す機会を得た。彼の後継者シャプロン氏と、前任者ドミニク・フロン氏である。歴代の醸造最高責任者たちは、創造的な野心と絶え間ない伝統の再解釈により、人々を陶酔させる至上の一滴を生み出してきた、ドンペリニヨンの精神の継承者だ。
その尊い無形遺産が受け継がれ、新しい時代が幕を開けようとしている今、歴史の証しといえるドン ペリニヨン ヴィンテージ 2008をぜひ味わってほしいのである。
●MHDモエ ヘネシー ディアジオ
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※『Nile’s NILE』2018年12月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています